第3話 豚は観察する

 それにしても、みんな着物を着てるわね。でも、ちょんまげは結ってないわね。あたしの魂が江戸時代にでもタイムスリップしちゃったのかしら。時々2メートルくらいの竿を背中にさしている人は何かしらね。


 商家の前にある大きな通りは、家が一軒は建てられるほどの道幅があり、道端みちばたの家々は2階建ての木造建築がびっしりと並んでいる。

 その道の先には、3層の大きなお城があり、城のてっぺんにはしゃちほこの代わりに気が抜けたような顔の猫がだらーっと座っている。


 あら?!いま、あくびしたわよ!生き物!!この距離で見えるって?!めっちゃでっかいの?!めっちゃでっかいの?!


 「ぶーちゃん。縁側に乗り出してると落ちちゃうよ。」


 「ブヒー。」

 そうよね。この短い足じゃ、滑って落ちちゃいそうだわ。猫も気になるけど、先ずは屋敷を探検したいわ。


 トトトトトと廊下に出て、千代に振り返る。


 「ぶーちゃん?どこいくの?」


 「ブヒー!」

 ついてきなさい。あなたがいないと、意識が豚になっちゃうんだから!


 「そっちは、おっとーの部屋だよー。」


 「ブヒ。」

 あら、そうなの、じゃあ、こっちは?


 「そこは、お洋服がある部屋だよー。」


 「ブヒ。」

 衣裳部屋ね。じゃぁーこっちは?


 「そこは今ダメだよ。大事なお客様と話す部屋で。おっとーとお奉行様がお話してるから。」


 「ブヒ?」

 あら?そうなの?越後屋とお奉行の会話って、めちゃくちゃ興味あるけど、オカマは危うきに近づかずだから、部屋に戻りますよ。

 越後屋。そちも悪よのぉー。お奉行様ほどではありませんよ。にたぁー。なんて…やっぱり覗こうかしら?

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