第2話 豚は逃げる

 「ブヒー!」

 ここから逃げ出すのよ。


 ダッと千代の部屋から板張りの廊下に走り出すと。


 ――越後屋千代の私物最適活用スキルの範囲外に出たため、脳が非活性化されました。


 「ブヒ。」

 ぶひぶひ?ぶぶぶー。


 ぶひ。


 ぶひひ。


 ――越後屋千代の私物最適活用スキルの範囲内に戻ったため、脳が活性化されました。


 「ブヒー!」

 今、あたし豚になってた?!薄っすらとだけど!完璧な豚になってたじゃないのよ!千代って、このデブながきんちょのそばにいないとならないわけ?!


 「ぶーちゃん。どうして遠くに行っちゃったの?おいでおいでー。」


 「ブヒ…。」

 仕方ないわね。現状がわかるまで、あんたのそばにいたあげるわよ!


 千代に近付くと、ぎゅっと抱きしめられる。


 「ブヒ…!」

 もっと優しく抱きなさいよ!あたしは繊細な乙女なのよ!

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