第二章 登場! 正義の味方 1



第二章 登場! 正義の味方


       * 1 *


「……」

「……」

 すぐ隣に立っている樹里の視線に、トーストを口に運ぼうとしていた手が止まる。

 九月一日。

 昨日で夏休みが終わって、今日から二学期が始まる。

 樹里に起こしてもらって、収まらない暑さに辟易しながらベッドから出て、とりあえずシャワーを浴びて自分で朝食をつくった。

 樹里の分はつくってない。

 精密検査をされてもバレないくらい人間と同じ構造をしているんだそうだけど、樹里の身体は戦闘員と同じで、食事をしなくても大丈夫なんだそうだ。

「ごちそうさま」

 言って食器をキッチンに持って行く。

 ため息の音が聞こえたけど、僕は樹里に声を掛けない。

 別に喧嘩をしたわけじゃない。いまは樹里にどう声をかけていいかわからなかった。

 ――この前みたいな作戦というわけにもいかないしなぁ。

 とりあえずトライアルピリオドのパスを目的にしようと思った悪の秘密結社の活動。でも最初のときみたいに、あんまり人に迷惑をかけるような作戦はやりたくなかった。

 ずいぶんニュースやネットで話題になってるらしい情報も収集してない。どんな風に話題にされてるのか見るのが怖かった。

 そんな風に今後のステラートの方向に悩んで、管制の方法や変身スーツの使い方を勉強したりと別に暇だったわけじゃないけど、表立った活動をせずに数日が過ぎてしまっていた。

「今後、ステラートはどうしていくつもりですか?」

 靴を履く段になって、樹里がやっと口を開いた。

 数日前に「考えておく」と言って以来返事をしてなかった問いだけど、やっぱりいまの僕にもその問いへの答えはない。

「と、とりあえず学校行ってくるね」

「……行ってらっしゃいませ」

 樹里の深いため息を聞きながら、僕は玄関の扉を閉めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る