双頭の龍と言えば恰好は良い

「おっはよう隼人はやと龍彦たつひこ!!」

「あぁ…おはよ、笹原ささはら…‥。守谷もりやもおはよう…」


 張りのある声と共に声をかけられて、笹原くんとよく一緒にいる本郷ほんごうくんが真っ先に応える。たまたまそこに居合わせただけなのに、本郷君だけじゃなく俺にも声をかけてくれたことに少し嬉しくなる。


「おはよう、笹原くん、本郷くん」


 にこにこした笹原くんはもう一度、おはようといって本郷君の方に寄っていく。不思議な組み合わせだけど、真逆に見える二人はとても仲がいいらしい。笹原くんは明るくて誰とでも仲がいいのだけど、特にも本郷くんとは一緒にいる事が多い。

 本郷くんは凄く物静かな人で、川内かわうちくんとどっちが静かかと言うくらいには静かだ。


「あ、竜之介りゅうのすけー!ねぐせやべーじゃん、おはよー!」


 笹原くんのそんな声と、ぬっと後ろに気配を感じて振り返ると、ぼさぼさの頭のまま、今まで寝ていましたという顔をした青原あおはらくんがいる。いつも制服を着崩しているけど今日はいつにもまして凄いことになってる。


「うるせー…低血圧ナメんじゃねえ……ガッコきてるだけでえれぇんだよ…」

「おはよう青原くん」


 制服の前を全開にしているせいで、中にきている派手な色のシャツが見えている。


「あー…はよ…、守谷、そこ邪魔、退いて」

「あ、ごめんね、気が付かなくて」


 退くよりも先に肩を押されて押しのけられる。俺ってとてもトロいからなあと反省しつつ、もう一度ごめんね、と告げるとぶっきらぼうな、気だるそうな声で、別に、とだけ言われる。


「怒らせたかなあ…」

「守谷ーおはよ、どうした?」


 のそのそと歩き出したあたりで肩を組んできたのは岡山おかやまくんだ。背が高いから、組むというか俺の肩に腕が乗っている感じがする。


「ああちょっと青原くんに迷惑かけてしまって」

「ブルードラゴンに?」

「ブルードラゴンなんてよんでるの…?」

「かっこよくない?」

「いや、どうだろう」


 青原竜之介あおはらりゅうのすけ、だからブルードラゴンなんだろうなとすぐわかるあだ名なのはいいけど、青原くん自身はそれを知っているんだろうか。


「守谷は…何ドラゴンだろうな」

「えぇ…?いいよ、俺そんな柄じゃないから」

「ガードドラゴン?ちょっと辞書引いちゃおっかな

「いいってばあ」


 そんなやりとりをしていると、もう一人に肩を叩かれた。


「委員長なんだからエンペラードラゴンとかで良いだろ、ラスボスって感じして」


 どこで聞いていたのか後ろからやってきた馬場ばばくんがそんなこといって、教室に入っていく。


「確かに?」

「ええっ……」

「キングとかでもかっこいいな、ちょっと馬場と話そう」

「俺全部遠慮していいかな…そのあだ名」


 控えめにそういうと、じゃあ案だけは聞いて、と言われてしまった。

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