第9話 ヒーローは遅れてやって来るのなら、それは社会人として落第である
「よしゲスオ、そいつを離していいぞ」
「了解でゲス」
「はぁ……、はぁ……、乙女になんたる恥辱を味あわせてくれるのかしら……」
「口だけは達者と褒めてやる、しかし俺達のアジトに乗り込んで来たのだからこうなる事くらいわかっていたんだろう」
「知らないわよ、あんた達なんて……、スケベ本を何冊も持っている変態……、って事くらいしかね……」
「良くわかっているじゃあないか。お前が探し当てた通り、密本を手にして生きる者「ラバデー」とは俺達の事よ」
「何を言っているの……、密本……?」
「まさかここを探し当てられた時は参ったさ、いつどこでヘマをやらかしたか理解できていないんだからな。どうやってここを突き止めた?」
「そんなスケベ臭を撒き散らかしているのだから……、燃やされて当たり前でしょう……、……あ。」
そうだ。私には触れずに燃やしたりエネルギーを放出したり出来るんだった。どうして忘れていたのかしらと子一時間自分の脳に問う掛けたい所だけれど、今は褒めて上げます。よーしよしよし、脳はね、こうやって上げると喜ぶんですよ。
さぁ、ここからは私のヒーロータイムとしゃれ込みましょうか。
「私の中に眠る恐怖の力よ! 目の前のアホ二人をすり身にしなさい!」
この言葉は宙を舞うばかりで、叶えれる事は無かった。あれほど有用だったあの力は、主の言葉を無下にした。
「何故またここぞって時に発動しないのよ!」叫ぶしかなかった。
「うわぁ……、いきなり大声上げて何だよおっかねえ……」
「くすぐり過ぎたから頭が狂ったでゲス」
クルエルに剣を向けられた時も上手く機能しなかった、何なのこの不安定な力は。偶然だった? 偶然にしては出来過ぎている、どうやっても剣を逆にへし折るなんて私が鉄で出来ていても難しい。それがこんな可愛い女の子の羽毛の如く柔肌がどうにか出来る訳も無い、あれは何かしらの力が働いて、それで。そうじゃないと私の肌が鉄より固い事になってしまうのだから、絶対にそうと言い切れる。
「何をしたかったのか知らんが、お前の仲間の居場所を教えろ。教えないとまた拷問をしちゃうぜ?」
「拷問? あれが? 拷問って言ったら銅で作った牛の中に人を詰めて炙るとか、生爪を一枚づつ剥いで行くとか、車輪に括りつけて水に漬けるとか、そう言うものでしょう。あれを拷問だなんて言えたものですか。……何です?」
「……あんな悪魔みたいな発想する女はどう思うゲスオ?」
「ちょっと女として無いと思うでゲス。行き遅れる中古品に成り下がるのがお似合いでゲス」
「うるさい! 良いからこれを解きなさい!」
「解いたらどうする、俺達の事を回りに言いふらすんだろう?」
「言いふらす程の価値はあなた達にはありません!」
「言いふらせよ! 言いたくなるだろう! 俺達の存在を世にもっと知らしめろよ!」
「そんな事で記憶の容量を使ってたまるものですか!」
なんて馬鹿な人達。本はこれほどの頭を悪い人物を量産してしまう魔の書物なのだと再確認をした。やはり世界中の本を燃やして回る私の考えは限りなく正解に近い正解、逆に不安になるくらいの良判断だったのだ。あれもこれも本なんて邪悪な存在が人を脅かしているから、私がお馬鹿さんに捕まっているのだから、書籍を全て切って捨てて頂きたいと私は切って捨てる様に思う。
「アニキ、もうこの女やっちゃいましょうぜ」
そもそも私は何の因果で時計が逆回りしている様な脳が退化している世界に飛ばされたのだろうか、ただ本が嫌いな一乙女な私がどうしてこんな罰を……、え、やっちゃう?
「ちょっと待ちなさい、そこのゲスオとか言う変な名前の人。やっちゃうって何? まさかそのスケベな本みたいな事をこの麗しさ満点な若い肉体にぶつけようって話をしているの……?」
「さぁアニキ、お先にどうぞ」
「あぁ、助かる」
「話を聞きなさい! 何!? やっちゃうって何!? 私に何をするの!? 男二人が寄ってたかってする事なんて、そんなの一つしか無いじゃない! このけだもの! 変態! 犯罪者! バカ! アホ! 地獄に落ちろ!」
「もう遅い! お前が迷子とか言って騙して侵入してきた自分を恨むんだな! 「拷問のススメ」ランダム十ページコースの刑だ!」
「いや……、ちょっと来ないで……っ! た……、助けてよクルエルーーー!!」
くすぐられてから腰が抜けて動けない私の願いを、神様が拾ってくれたのだと思う様な出来事が起きた。ガラスが割れて一人の男が乗り込んできた。あの藍色の髪の毛は見覚えがある、あの所々にあしらった見るに耐えない髑髏の装飾には見覚えがある、あのとても自分に酔っていそうな中二病まっさかりな服装には見覚えがある。どうも私には変態が良く集まる蜜が塗られているらしかった。
「助けに来たぜ、カムル」
「何だお前!」
「クルエル!?」
「俺は……、ヒーローになる男だ!」
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