真実の世界編

第1話 魔法とは

 私がリオン・リンドブルムという名前で生まれたこの王国の名前は私のファミリーネームにもなっているようにリンドブルム王国という名前。

 母の名前はリリナ・リンドブルム。銀髪が綺麗な美人。

 日本だったら絶対女優とかやってそうな人…………

 父は王族のクロメシア・リンドブルム。このリンドブルム王国の王様。

 最初はこの国の王様ということもあってもう少し怖い印象を持ってたけどそんなことはなくてむしろ優しすぎるくらい。


 一応私も王族としてこの世界に生まれてこうして九歳になった今も何不自由なく暮らすことができてる。

 母の影響で私も銀髪の女の子になってて正直とても気に入ってる。

 だって日本だと銀髪なんてそうそうしないでしょ?染めるにしても相当勇気がいるしね。


 だけどそんな中でやっぱり王族ならでわの厳しい一面もあった。

 それは一日四時間外部から教育係、日本で言う家庭教師のような人が来て勉強をする時間。


 でも意外なことに私は日本語を話す感覚で会話をするだけでこの世界の人と普通に会話が成り立った。それに勉強の内容も日本で言う小学校の算数や語学の勉強ばかりで私には何の問題も無し。

 というかむしろ大学生の知識をフル活用して教育係の人を驚かせたくらいだもん。


 まぁそれが原因で私、この王国で天才なんて呼ばれてるのは…………ちょっと嫌だけど。


 こんな感じで私がこの世界にもなじんできた時とうとう私にとって初めての分野の勉学が教育係の人から教えられた。

 それは『魔法学』。言葉の通り魔法について学ぶ学問みたい…………ってこの世界には魔法があるの!?


「リオン様、本来魔法学はこの世界で十歳を超えた方が学習するものなのですが今のあなた様なら問題ないと判断いたしました」


 と、教育係のドナンさんが言った。


「どうして十歳から何ですか?」


「はい、この世界では十歳を超えた人は成人と認められるのです。そして十歳になると『能力』が一つ身に宿るのです。その能力が身に宿って始めて我々人間は魔法が使えるようになるのです」


 そうなんだ。

 つまり九歳の今の私はまだ魔法が使えないってことなんだね。

 それにしても十歳で成人とは…………実年齢十九歳だからまだ成人もしてないしお酒も飲めないのに、この世界はそんなに早く大人になれるとは流石異世界、魔法のある世界。


 まあ何だかんだで私は周りの人よりも早く『魔法学』という分野を学び始めたのだった。





 そして魔法学を学び始めて一年。


 私もとうとう十歳の誕生日を迎えた。



 能力を身に宿すには礼拝堂で一度身を清める必要があるみたい。

 そして身に宿る能力にも様々な種類があって主によくある例としては属性系の魔法行使能力。例えば炎、水、草、それ以外にも聖霊なんてものもあるみたい。

 それ以外にも沢山の能力が存在して事前に予測することは誰にもできないみたい。


 そして私は母と父、それ以外にも沢山の立会人の元で礼拝堂に行き身を清めた。


 そこからは不思議な出来事の連続

 目を開けるとそこは礼拝堂じゃなくなってるわ変な声は聞こえるわで正直言って泣きたかった。だって私の苦手な者ランキング二位はお化けとか心霊現象だもん。

 あ、ちなみに一位はシイタケです。


 と、そんなことは置いておくとして次に目を開けた時には景色は礼拝堂に戻っていた。


「リオン、大丈夫?」


「あ、お母様…………」


 私はふらつきながらもゆっくりと体を起こした。


 これで……魔法が使えるようになったの?私は体中あちこちを触って変わった点がないか確かめた。すると教育係のドナンさんが私に声を掛けてきた。


「リオン様、まずは『能力確認』と口にしてみてください」


 え?能力確認?私はちょっと疑いつつもドナンさんの言葉通り能力確認と口にした。

 すると驚くことに目の前に大きなウインドウが出てきた。




 ============


 名前 リオン・リンドブルム

 レベル 1

 攻撃 8

 防御 7

 俊敏 4

 魔力 0

 能力 魔力適正無効


 ============


「リオン様。視界に沢山の文字がご覧できますか?」


「は、はい」


「そちらの能力、魔力によってリオン様の適正魔法が分かるはずです」


 あ、あれれ~?

 魔力0に魔法適正無効?それって私魔法が使えないってことじゃ…………


「リオン、どうかしましたか?」


 ああ、母まで心配そうに私を見てくる…………どうしよう、ここは正直に答えたほうがいいよね。


「お、お母様、私魔法が使えないみたいなんです…………」


「え?リオン、それはどういうことかしら……」


「あの、魔力と書かれた欄の数値が0なんです。それに能力の部分も魔法適正無効と書かれてて」


 私のその言葉に礼拝堂にいた全員が黙り込んでしまった。そしてドナンさんが恐る恐る私に尋ねてきた。


「リオン様……それは誠でございましょうか」


「は、はい…………」


 そして次の瞬間、ドルドさんが驚くべき言葉を発した。


「そ、その者を拘束せよ」


 重々しい空気が礼拝堂を包み込んでいた。

 そして見張っていた何人かの兵士が私の腕を力ずよく掴んだ。


「ど、どういうことですか!?ドナンさん!!」


「これはご命令なのです、リオン様」


「え?」


「クロメシア王からのご命令なのです。もしもリオン様が大きな力をお持ちしていなければ拘束しろと」


 何それ……

 私は周囲の人を見回す。だけど誰一人私と目を合わせようとしなかった。それどころか私の話すらも聞こうとしてない。母は目に涙を浮かべてる……どうして?


「どうして?」


「リオン様。わたくしはクロメシア王からの命令で貴方の教育で教えるなと言われていたことが一つだけございます。それはこの世界の人間の価値や優劣は魔法の技術で決まるということなのです。ここまで言えばお分かりいただけたでしょうか…………」


 私は絶句した。

 何よそれ……この世界の人間の価値は魔法の優劣で決まるの?だから私は価値がないってことなの…………


「お話は以上です。連れて行きなさい」


 そうか、初めから父は私なんて大切に思ってなかったんだ。魔法の技術が高い子供にしか用がなかったってことね。


 ドナンさんさんは兵士にそう言って私はそのまま地下の牢屋に入れられた。





 ・・・


 この世界は魔法の技術で人間の価値が決まる。その言葉は私の頭から離れなかった。

 私の魔力は0、そして能力も魔法適正無効。魔法なんてこれっぽっちも使えない。つまりこの世界では全くの価値がない人間ってことになるのね…………

 魔法学の教科書を見ても魔法適正無効なんて能力は記載されてなかったし…………

 それにあれだけ優しくしてくれた父の本性がまさかそんな人だとは思わなかったよ。まさか日本で死んだのにこっちの世界でも死んじゃうのかな、私。


 私は牢屋の隅でうずくまりただひたすらに魔法とは何かそればかりを考えていた。

 魔法を使うためにはその基礎となる魔力がいる。つまり自分の体に魔力があって初めて魔法が使えるようになる。更に能力によって自分の適性の属性や種類の魔法が使えるようになって、その種類は多種多様、攻撃に使う属性魔法や回復ができる治癒、更には錬金なんてこともできる。


 ああ、考えるだけで絶望的だよ。

 私は魔力が0、そもそも魔法を使うことすらできないんだもん。


 そんな絶望的な状況の中、私が入っていた牢屋に一人の女性が近寄ってきた。


「リオン様!!」


 そこに立っていたのは私が生まれた時も一番最初に抱き上げてくれた侍女の方、名前はミランさん。


「ミランさん!!どうしてここに?」


「姫君に代わってリオン様を助けに参りました」


 母に代わって?


「リオン様のお母様、リリナ様も大変貴方様のことを心配していらっしゃいます。ですが今現在兵士の見張りがあってお部屋から出ることができないのです。ですからわたくし目がリオン様をここから出します」


 そう言ってミランさんは魔法を唱え始めた。


「ウインドブレイク!!」


 そして短い詠唱のあとの魔法の名前が発せられると同時に無数の風の刃が降り注ぎ鉄の折が一気に吹き飛んだ。

 それは属性は風、魔法自体の難易度は中級の攻撃魔法だった。しかしそれは中級魔法のはずなのにいとも簡単に鉄の折を粉砕したのだ。多分魔力以外の数値、例えば攻撃の数値が高いから中級魔法でもとてつもない威力が出たんだと思う。


「えええ~~!?」


 これには驚かずにはいられなかった。普段は誰よりも優しくて温厚だったミランさんだったからそのギャップのせいか余計に驚きが…………


「リオン様!!早くなさらないと追手が参ります」


 そう言ってミランさんは私の手を取って走り出した。


「ミ、ミランさん!!どこに行くんですか!」


「リオン様をこの城から出します。リオン様よろしいですか?この世界は魔法の実力で全ての優劣が決まります。ですがそんな世界でもきっとリオン様を保護してくださる方がいらっしゃいます。ですから城をでたらその足でそのままこの国を出るのです!!」


「え!?それじゃあミランさんやお母様は?」


「わたくしたちはクロメシア様がいる限り城を出ることは出来ません。ですからリオン様には自分の力で生きて行ってほしいのです!!」


 そして私とミランさんは城の裏門へと出た。


「いいですか、リオン様。この先の森には魔物は出ません。ですから心配なされずそのまま国境をまたぐのです。そうすれば隣国のルーブルという小国家に着きます。その国ならばリオン様をきっと保護してくださります」


 そう言ってミランさんは私の背中を勢いよく押した。


「行きなさい!!」


 その言葉を聞き私は振り返らずに全力で森に向かって走った。目からは止まることなく涙が流れ出る。そして森の中を走っている瞬間に背後で大きな爆発が起こった。

 それでも私は無我夢中で森の中を闇世の中全力で走っていったのだった。

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