第9話 美女のSOSOUは唆る

 柔い・・・何が柔いかって?後頭部だよ。

 正直、さっきから意識は戻っているが、後頭部に触れているモノが素晴らしくて絶賛堪能中だ。

 うっすらと目を開けると、眼前に聳え立つ形の良い双丘・・・紅玉のオパーイだ。

 引き締まりながらも柔らかさを保っている太ももと、見事な双丘に挟まれて堪らんですよ!!


 「姐さん、レオナルドは起きたカ?」


 「まだ気絶してるヨ・・・本当、相変わらずモヤシで困るネ!」


 おいおいモヤシって・・・酷いじゃないか!せめてゴボウって言って欲しいぜ紅玉ちゃん!!


 「ん・・・起きたカ?」


 紅玉が俺の顔を覗き込もうとした瞬間、俺は何事もなかったように仮病を決め込む。

 ふふふ・・・甘いぜ、俺はまだまだ堪能させていただきますよ!!


 「どうしたノ?」


 「んー・・・何か視線を感じたんだけど、気のせいだったみたいだヨ。

 それで、そっちは盗聴器は見つかったカ?私ハ正直マユツバだと思うヨ」


 「あぁ、それなんだけどネ・・・見てヨ、この部屋だけで10個も見つかったヨ」


 「な・・・何だってー!?」


 「あんっ・・・!?レオナルド、まさか起きてたのカ!?」


 しまったーっ!驚きすぎてつい!うっかり!紅玉のオパーイに顔を突っ込んでしまったーっ!?

 これはヤバいぜぇーっ!紅玉の目が笑ってないぜーっ!!

 俺は慌てて紅玉から離れ、身構える・・・正直、勝算は無いがやらないよりはマシだ!


 「レオナルド・・・良いご身分だネ?小便はすませたカ?神様にお祈りハ?部屋のスミでガタガタ震えて命乞いをする準備はOKカ?」


 「どれも出来てません!だって今まで寝てたじゃん!?無理じゃん!?いや、部屋のスミでガタガタ震えて命乞いをする準備は出来てるじゃん俺!?」


 ヤバいぜ・・・見る見るうちに紅玉の戦闘力が上がって行くのが見えるぜ!

 今の俺にライフルさえあれば、ラディッツに殺された戦闘力5のおっさんみたいに勇気を出して戦えるのに!


 「うふふふふ・・・まぁ、命乞いをしても助からないんだけどネ!」


 「待ちなヨ姐さん・・・姐さんはただでさえ寮監に目を付けられてるのニ、これ以上問題起こして家に知れたら爸爸に殺されるヨ?」


 「ぐぬぬぬぬ・・・!レオナルド、今回だけは許してあげるヨ!次は無いからネ!?」


 紅玉は鼻息荒く構えを解くと、俺を射殺さんばかりに睨んできた。

 正直ちびりそう・・・いや、ちょっと漏れたわ。

 俺は2人に見えないように股間を触り、湿っていないのを確認して安心した・・・流石に股間に地図が出来てるの見られたら、俺は立ち直れない自信がある。


 「さ、さて・・・蒼玉、これからは俺も手伝おう!この部屋は何処を調べた?」


 「額縁と時計、ベッド、天井の裏なんかを調べたヨ!でも凄いネ・・・盗聴器ってこんなに小さいんだネ」


 蒼玉は、細い目を更に細めてマジマジと観察している・・・よく見ると、彼が回収した盗聴器は壊れていないようだ。

 あれ・・・これってやばくね?だってさ、壊れてないって事は、今までの会話も全て聞かれてたって事だよね?

 うん、俺が紅玉のオパーイと太ももを堪能していたのもバレテーラ。


 「そ、蒼玉きゅん・・・何でそれ壊してないのかなぁ?」


 「えっ?だって何か勿体ないヨ・・・」


 「あのね、それって無線式なのよね・・・しかも、額縁の裏ならたぶん電池使ってるのよ?」


 「レオナルド、回りくどいヨ!はっきり言ったらどうネ!?」


 俺の話し方に苛立った紅玉は、またもや俺に詰め寄って来た・・・上下に揺れるオパーイが眩しい。

 だが、今はそれどころじゃない・・・アタイ、負けないんだから!!


 「要するにだ・・・それって生きてるから、たぶん筒抜けよ?」


 「あっ・・・」

 

 「ねぇ、それってサ・・・私があんたに膝枕してたのもバレてるノ?」


 「今まで言ってなければバレてなかったかもねぇ・・・まぁ、今膝枕してたって言っちゃったし、確実にバレたんじゃないかな?」


 俺の言葉を聞いた紅玉はその場に蹲って頭を抱えた・・・膝に押し潰されて歪むオパーイも良いものだね!


 「ぬあああああっ、マジかヨォォォォ!?どうしてくれるんだヨ!?」


 「仕方ないじゃん?ようこそ被害者の会へ!」


 「嫌だヨ!何で私があんたのストーカーなんかに目を付けられなきゃならないのヨ!?」


 「ハハハハハ!これで俺達はズッ友だ!!」


 「シーッ!2人とも静かにするネ!」


 俺が掴み掛かって来た紅玉に揺さぶられていると、それまでアワアワと右往左往していた蒼玉が近付いて来て俺達の口を塞いだ・・・なんだろう、蒼玉の顔が真っ青だ。

 俺と紅玉は耳を澄ませ、そして涙目になって抱き合った・・・部屋の外からヒタヒタと足音が聞こえて来たのだ。

 オパーイが柔らかいとか、そんな事はどうでも良いくらいに怖い・・・だってね、そいつが俺達の部屋の前で止まったのよ?怖くね?


        ピンポーン!


 備え付けのインターホンが鳴り、俺達は3人して抱き合った・・・皆んな心臓がバクバクと鳴っている。


     ピポピポピポピポピンポーン!


 部屋の外に居る何者かは苛立っているのか、高橋名人並みの連射でインターホンを鳴らしてくる。


 (怖いネ!)


 (俺も下の蛇口が緩みそう・・・)


 (やめてヨ!そんなプレイに興味はないヨ!?)


 『中に居るのは分かってますよぉ・・・?』


          !!?


 俺達が3人仲良く小声で話していると、扉の外から無感情そうな女性の声が聞こえてきた・・・いや、この声は間違いなく怒っている!俺は違いの分かる男だから分かるんだ・・・。

 そして、俺には声の主も即座に理解出来た・・・ルチアしか居ない!はっきりわかんだね。


  ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!


     ドンドンドンドンドンドン!!


 鍵の掛かっているドアノブが壊れんばかりに何度も動き、扉を乱暴に叩く音が室内に響き渡り、俺達は言葉を発することすら出来ずに震え上がる。

 なんか、昔こんな感じのホラー映画観た事あるな・・・確かスタンリー・キューブリックの『シャイニング』だったかな?これで斧で扉壊して来たらまんまだわ。

 俺はあまりの恐怖に耐えられなくなり、何故か昔の事を思い出した・・・だってさ、怖くてしかたないんだよマジで。


 『ちっ・・・!』


 ルチアはしばらくの間無理矢理入ろうと試みていたが、扉と鍵が頑丈だったため諦めたらしく、来た時と同じようにヒタヒタとゆっくりと歩いて去って行った。


 「行ったか・・・?」


 「レオナルド、あんた何て奴に目を付けられてるのヨ・・・あんなのが出てくるなんて聞いてないヨ!?」


 「仕方ねーじゃんよ!俺だけだと怖くて耐えられないんだよー!助けて紅玉様、何でもしますから!!」


 「ん?今何でもするって言ったカ・・・?」


 またもや俺が紅玉に詰め寄られていると、隣であまりの恐怖に嗚咽を漏らして泣いていた蒼玉が涙目で俺を見てきた・・・ちょっと可愛いと思ってしまったが、俺は間違いなく女性が好きだ。


 「まさか・・・レオナルドと同室の僕は、これから毎日アレに耐えないといけないノ?」


 「一緒に耐えようぜ・・・俺達であの悪魔を退治するんだ!!」


 俺が蒼玉と固く誓い合っていると、紅玉が窓の外を見て口を開け、ガクガクと震えているのに気付いた。

 そして、俺は何故かベッドのシーツが生温かく湿っているのを不思議に思い、視線を落として驚愕した・・・あの勝気な紅玉がSOSOUをしていたのだ!


 「どうしたんだ紅玉!?美人のSOSOUは唆るが、流石に俺のベッドでそういったプレイは勘弁してくれ!!」


 おっといけねぇ!韻を踏んじまったYO!!

 俺は慌てて近くにあったタオルを紅玉に手渡そうとしたが、更に惨劇が待っていた・・・蒼玉、お前もか!?

 俺と固く誓い合っていた蒼玉も、何故か窓の外を見てガクブルして漏らしていたのだ・・・俺のベッドが大変な事になっちまった!


 「まったく、ここは寮の最上階だぞ!?外に何があるって言うん・・・」


 俺は2人に釣られて窓の外を見て気付いてはいけないモノに気付いてしまったんだ・・・。

 あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜ・・・『おれの部屋は寮の最上階にあるから何も無いと思っていたら、窓の上から逆さまの顔が覗いていた』

 な・・・何を言ってるのか わからねーと思うが

おれも何が起こっているのかわからなかった・・・

頭がどうにかなりそうだった・・・催眠術だとか幻覚だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・!


 『やっぱり居たぁ・・・!』


 最上階の窓の上から室内を覗いていた逆さまの顔はニタリと笑うと、ゆっくりとベランダに降りてくる・・・。

 俺は声にならない叫びを上げ、急いで紅玉と蒼玉をベッドから引きずり下ろすと、そのままベッドをひっくり返して窓を塞ぐ。


 「2人とも早く正気に戻ってくれ!」


 「レオ様・・・愛を誓い合った私を締め出すなんて酷いですよぉ」


 「俺はそんなの知らねーよ!!」


 俺はそれからしばらくたった1人でルチア(悪霊)と死闘を繰り広げ、騒ぎを聞きつけた寮監や他の寮生が駆け付けた時には、憔悴しきっていた俺も紅玉達同様に失禁していた・・・。

 こうして、俺の楽しみだった転生学生ライフは最悪の形で始まってしまった。

 


 



 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る