第6話 新学期と変態

 俺が転生してレオナルドの身体に入って1ヵ月が経った・・・いよいよ明日から新学期が始まる。

 この1ヵ月間、ルチアを憲兵に引き渡してからは平穏な日々を過ごし、俺はこの世界について色々と調べ上げた・・・それに加えて大量の宿題もあったんだけども。

 最初こそ違和感なく会話や書物を読んでいたのだが、この世界は何もかもが基本的に日本語が使われているようだ。

 まぁ、そこはゲーム内ゆえの都合と受け取っている・・・俺は日本語しか喋れないから助かったけどね!

 ここ1ヵ月での主な活動は、勉強→サーシャと遊ぶ→調べ物→サーシャと遊ぶ→父の仕事の見学→サーシャと遊ぶ→調べ物→サーシャと遊ぶ→変態をあしらう→寝るのヘビロテだったため、非常に有意義な時間を過ごした。

 そして今日、俺は明日からの新学期に向けて学生寮に戻る事になった。


 「にーしゃま・・・かえってきたら、またシャーシャとあしょんでね・・・」


 「あぁ、約束するよ・・・父さんと母さんの言う事を聞いて、良い子にしてなさい」


 「身体には気を付けなさい」


 俺は、しがみつくサーシャの頭を撫でてやる。

 これから、週末以外はサーシャと離ればなれだ・・・正直ツライです。

 両親も久しぶりに一家団欒を楽しめたため、名残惜しそうにしている。

 変態じゃなかった・・・アリスも涙を浮かべて俺を見ている・・・しばしの別れを惜しんでくれているなら嬉しく思う。


 「結局、今日まで一度もご褒美を頂けなかった事が悔やまれます・・・」


 ですよねー・・・期待した俺が馬鹿だったわ。


 「レオ様・・・学生寮にいらっしゃる間は、わたくしには何も出来ません。

 もしあの女が現れた場合には、戦闘は避けて人混みに紛れてやり過ごす事をお勧めいたします」


 「あ、あぁ・・・正直、ここ最近現れなかったから忘れてたよ。心配してくれてありがとう」


 「いえ、使用人として当然のことですわ・・・それと、これをお渡ししておきます」


 アリスは紙袋を取り出して俺に持たせた・・・何故だろう、嫌な予感がビンビンですよ。

 俺は袋を開けて、中に入っていた布を広げた。


 「わたくしの下着コレクションでございます。

 これならば、寂しい夜のおかずにもってこいかと思います・・・いかがなさいましたか?あまり人前でそんなに凝視されては、わたくし濡れてしまいますわ・・・」


 俺は、身をよじって恍惚としているアリスに向かって紙袋を投げつけた・・・TバックやらOバックやら、セクシーな下着の数々が袋から飛び出して床に落ちる。


 「いらんわこんな物!どこに使用人の下着を隠し持って行く奴が居るんだ馬鹿野郎!!相部屋の奴に見つかったら学園に居られなくなるわ!!」


 「左様でございますか・・・やはり、ただの布よりも女性が着用している姿の方がお好みなのでしょうか・・・それでしたら、わたくしをダッチワイフとして寮に置かれますか?」


 アリスの予想は当たっている・・・だが、もう何を言っても無駄だと判断した俺は、アリスの存在自体を無視して家族に手を振った。


 「では、行ってきます・・・皆んなも身体には気を付けて下さい」


 俺が手を振りながら屋敷を出ると、サーシャが泣くのを堪えながら手を振ってくれた。

 俺は今すぐ駆け寄って抱きしめたい衝動に駆られたが、何とか堪えて門をくぐった。

 すると、初老の男性が俺に近づいて荷物を持ってくれた。


 「レオナルド様、学園までお送りいまします」


 門の前には車が停まっており、男性が俺の荷物を車に載せ、後部座席の扉を開ける。


 「近いんですから自分で行きますよ・・・」


 「そうはまいりません!アリスから伺いましたが、怪しい女がレオナルド様を狙っているとの事ですので、万が一に備えて私がお送りいたします!」


 男性は渋る俺を無理矢理車に押し込むと、さっさと運転席に乗り込んで出発してしまった。

 学園に着くまでの間、俺は運転手の男性と他愛もない会話を楽しみ、出発してからおよそ15分程で学園に到着した。


 「ありがとう、助かったよ・・・帰りは気を付けてください」


 「はい、また週末お迎えにあがります」


 俺は車を見送ってから学園の門をくぐる・・・ヤバいくらいに緊張してきた。

 だってね、デカいんですよ・・・なんと言うか、例えるなら城みたいな建物なんですよ。

 正面に見えるデカい建物が校舎だろうか?俺同様に荷物を持った生徒らしい人達は、敷地内の右側にある建物に向かっている・・・恐らく、そっちが学生寮だろう。


 「取り敢えず寮の名簿で確認したけど、俺は確か最上階だったな・・・まさか、階段で登るなんて事は無いよな?」


 俺は建物の前に辿り着き、見上げて冷や汗を流した・・・その建物は20階建で、室数やベランダの高さ、幅を見る限り豪華ホテル並みの大きさだ。

 この学園には近隣諸国からの留学生なども多数在籍しており、さらには小・中・高・大の一貫教育なため、生徒や教師の数を合わせるとおよそ3000人にを超える。

 全ての学舎が広大な敷地内にあるのだが、ただ学生寮は大学以外は共同になっている・・・まぁ、校則では禁止されているのだが、未成年の喫煙や飲酒などに配慮しての事らしい。

 俺が気後れして寮に入るのを躊躇っていると、誰かに肩を叩かれた・・・驚いてそちらを振り向くと、そこには似た顔をした背の高い2人の男女が笑いながら俺を見ていた。

 2人は中華風の服を着ており、どちらもスタイルが良く、女性の方などチャイナドレスだ・・・けしからん!誠にけしからんですぞ!!


 「レオナルド、こんな所デ何してるカ?」


 「久しぶりネ!休暇ハ楽しかったカ?」


 2人の男女は、俺に片言の日本語で交互に話しかけてきた。

 確か男の方の名前は、学生寮での俺のルームメイトの李蒼玉だ・・・隣にいる女性は知らないが、2人はかなり似ているため双子なのかもしれない。

 学生寮の名簿によると、蒼玉は隣国からの留学生だ・・・そして、確かこいつも『トキ学♡』のパッケージに居た気がする。

 2人共狐目で目を細めているが、顔立ちはかなり整っている。


 「蒼玉、久しぶり・・・すでにホームシックになってるところだよ」


 「流石に早すぎるネ・・・大丈夫カ?」


 「相変わらズ軟弱だネ!レオナルドはもっと身体ヲ鍛えた方ガ良いヨ!!」


 蒼玉は心配そうにしているが、女性は呆れたように首を振っている・・・2人の性格は真逆のようだ。


 「レオナルドごめんネ・・・紅玉姐ハ思った事ヲズケズケと言いすぎるカら・・・」


 「いや、別に構わないよ・・・軟弱なのは事実だからさ・・・さてと、早く部屋に行って荷物を置こう」


 「そうネ!早く荷物置いて昼飯にするヨ!!」


 俺は2人を先に行かせてついて行く・・・ふふふ、これで迷わず部屋に行けるぜ!!

 それにしても、目の前にある紅玉の尻が気になって仕方がない・・・下着のラインが見当たりませんぞ?まさか、履いてない!?

 俺の視線に気付いたのか、紅玉は振り返って舌を出しながらお尻を隠した・・・正直股間に厳しい。


 「何をジロジロと見てるカ?ははーん、分かったネ!見たくてモ見えなイ、見えなイからこそ興奮すル・・・どうカ?チラリズムこそ最高のエロスだと思わないカ!?」


 紅玉は、ニコニコと笑いながらドレスの裾を持ち上げる・・・見えそうで見えない!見たいけど、見えない方がエロい!!


 「紅玉姐、はしたないヨ!そんなだかラいつも爸爸に叱られるネ!」


 「蒼玉は堅いネ!私ハ、こうやってアピールして婿探ししてるのヨ!!」


 目の前で喧嘩すんなよ・・・顔一緒だからこんがらがるんだわ・・・。


 「あっ!女子寮ハこっちだかラ、また後で食堂デ会いましょウ!」


 紅玉は、俺と蒼玉に手を振りながら去って行く・・・騒がしいが、楽しい奴だ。


 「さて、僕達モ行こうカ」


 「だな・・・遅れたら何を言われるか分からないからな」


 「そうだネ」


 俺達は並んで廊下を歩き、休みの間の出来事などを話しながら部屋に向かった。

 取り敢えず叫びたい・・・エレベーター・・・ありましたぞ!!


 「着いたネ!まずハ、お風呂に入りたいヨ!!」


 「いてらー・・・俺はその間ちょっと休むよ」


 「気分悪イなら寝てなヨ?」


 あぁ、蒼玉って良い奴だな・・・先日の変態にも見せてやりたいよ!そして、蒼玉って良い身体してるな・・・ん?


 「これでスッキリしたネ!やはり室内でハ全裸が一番ネ!!」


 「ちょっと待てーい!!何故ここで脱いだ!?」


 「お風呂入ルからだヨ?何かおかしいカ?」


 「脱衣所で脱がんかい!何が悲しくてルームメイトの息子さんを部屋で見なきゃならんのか!?

 さっき紅玉にはしたないとか言ってたのはどいつだ!!」


 「あれは廊下だったからだヨ・・・たぶん、今頃紅玉姐モ部屋で全裸になってるヨ」


 ヤベぇ・・・ちょっと想像しちまったぜ!正直見に行きたいんだぜ!!だが俺は屈しないんだぜ!!


 「蒼玉・・・それは実家だけにしなさい?」


 「わかったヨ・・・」


 蒼玉は渋々了承し、着替えを持って風呂場に行った。

 あいつはまともな奴だと思ってたんだけどなぁ・・・本当に碌なの居ないなこの世界!!

 俺はベッドの上で悶え、紅玉の全裸を想像して申し訳ない気持ちになってしまった。


 



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