第39話 勧誘
呼んでもいない執務室の中で完璧なまでの語り口を見せる男に龍騎は正直ウンザリしていた。目の前の書類を片付けたいが、外部の人が部屋の中にいる状態で書類を広げることは出来ない。男の話を無視しようものならすぐに気づかれ意識を向けるよう声をかけられる。力の使い所を間違っていると思うが。思わず口をついて出た言葉だったが、男は笑った。コレが私の仕事です。と。
彼が先程から語っているのは龍騎が今就いている仕事、騎士をしていることのデメリットと、警兵へ転職した際のメリット。つまり、彼を勧誘しているのだ。警兵になれと。
コレが初めてではない。
目の前でしゃべる男の顔を見るのも何度目か。
龍騎は一応、一応用意した茶に口だけつけながら呆けていた。
呆けていることも分かっているはずの目の前の男はそれでも話し続ける。一応話を聞き続けた龍騎の断る言葉ですら、毎回変わらない。
「俺は騎士を辞めるつもりはないし、警兵の頭をやってる人に恨まれているのでね」
残念ながらどちらにせよそちらには行けない。
男も、いつものように肩をすくめて苦笑いを見せる。仕方ありませんな、と。
いつもと違うのは唯ひとつ。
男がいつものように部屋の扉を開け、振り返り、龍騎に向けて放った言葉だけだ。
「もし、騎士の上が変わり警兵の上が変わったとしても同じ言葉が帰ってきますかな?」
挑戦的にも取れる言葉に思わず眉を寄せたが、何か言葉を返す前に男は部屋を出ていった。
来客が帰ったと判断した部下が部屋に入るなり、首を傾げた。警兵の男が帰ったあと、いつもなら来客用の椅子でなく自分の執務の机に備え付けた少しいい椅子に座っているはずの龍騎が来客用の椅子に深く腰掛け、何かを考えている。
今までにないことに何かありましたか、と声をかけたが彼は何でもない、と少し笑った。
いつもなら八つ当たりをしてくる人間がそうして笑っているだけで異常事態であり、なにもないはずが無いのに。来客用の茶を片付け、龍騎の部下である青年はそのままの足で騎士団早朝の女性の部屋を訪ねた。
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(↓作者一言)
書いてなさすぎて書き方が行方不明です。
模索を兼ね、しばらくは短くヤマなく、思いついたものを思いついたままに記載していこうと思います。無駄に話数が増えそう。
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