第37話 琉斗の一日

 

 琉斗の一日は同級生たちよりも少し早い。両親が起きるよりも一時間ほど早く起き、朝食の準備を整える。あわただしく朝食をとった両親たちを見送ってから白い髪の少女の手を引いて学校へ向かう。未だに学校に慣れない彼女は学校に行く意味琉斗に問う。その度に自分のためだと返すが彼女は理解できず頬を膨らませる。


 学校につくと彼女とは別れる。


 琉斗は学校で優秀な成績を修めているうえに、帰宅後に予習復習を行っているため教員の言うことに不明点はない。その知識を求めてか――それ以外を求めてか――休み時間になると彼の周りには人が集まる。人の良い笑みですべての言葉にこたえる彼は身体的ではない疲労を抱えて家に帰る。


 すると両親のどちらかは家にいることが多い。


 父親が居れば夕食の準備はする必要がなく、母親が居れば白い髪の少女の相手をする手間はなくなる。無理して帰ってこなくても大丈夫だよ、過去にそう言ったら父親の帰宅時間がわずかに早くなったのでそれからは誰かが帰っていたら何も言わずにただいま、と笑うことにした。


 夕食後に琉斗の仕事はあまりない。


 自分が家にいる間は気にしなくていい、という父親の言葉に甘えている。空いた時間は学校で学んでいる知識の復習にあてている。時折、母や白髪の少女が妨害するがもう慣れたもの。妨害があるからこそ効率のいい学習法が身についてしまった。


 そして夜が更け、彼は自分の部屋で一人『手紙』を書いた。

 

終わり

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