第三話 海上汽車、そして噂。
「ロロースロード王国へようこそおいでくださいました。当港一同皆様の事を心より歓迎申し上げます」
ラリクスは再び心を奪われていた。
今度は人ではなく、美しく素晴らしい光景に。
確かに王国全体の姿はさっき見た。が、しかし今この光景を見てラリクスは確信した。今、初めて王国の姿を見たのだと、今
入港管理局の外と内側じゃ全く違って見えるのだから。石造りの建物は一定の秩序を持って配置されていて見ているだけで充分綺麗だが、日の光の反射の関係だろうか。外にいたときはただ光り輝いていただけだがここから見ると建物の放つ光と日光が調和し美しく七色に輝いていた。
外から見たら遠すぎてよく分からなかったが実は海上のブイでいくつか絵を描いてたのだ。
実に素晴らしく美しい。成程、娯楽都市とはよく言ったものだ。
ラリクスが感嘆のあまり動けずに居ると横から声が掛かる。ちらっと横を見やると若干頬を赤く染めたクルルスが袖を引っ張っていた。
何度か訪れたことがある者も感嘆せしめるとは本当に凄い。
ロロスロードの誇り高さと意識を感じさせる。
「凄いでしょ?ここは。ここが世界最大の港市国家ロロスロードなんだよ。けど海にはもっと凄い都市や国がたくさんあるんだ」
ラリクスは思わず息を吐いた。ああ海は本当に広い。自分が思っていたよりもずっとずっと想像以上に広大だ。世界には自分の知らない事がまだまだたくさんあるらしい。
ラリクスはしみじみと言葉を吐き出した。
「……海は本当に広いし大きいなぁ。まだまだ世界は僕の知らない事だらけだ。これから本当に冒険が出来るんだね、何だかワクワクするよ」
クルルスはうんうんと頷く。
そんな二人は海に面する港のような場所、入港管理局駅にいた。至る所に時計塔があり時間を絶えず知らせてくれる。感動のあまり声を失うラリクスとそれを見つめるクルルスを尻目にガロンはその場を立ち去った。そのことに二人は気付かない。
『間もなくロードイセントラル駅行き往復線、28号が到着いたします。安全の為、臨海部よりもう三歩お下がりください』
入港管理局駅内にそうアナウンスが鳴り響く。
ラリクスはクルルスをちらっと見ると、頷かれた。
どうやらクルルスは知っているらしい。クルルスが何も問題無いと言うのならばそうなのなのだろう。
そうラリクスは考えていた。
すると、前方から甲高い笛の音が聞こえてきた。
煙突から水蒸気を吹き出し、淡い光に包まれ海の上を走る鉄で出来た乗り物、海上汽車が警笛を鳴らしながら高速で近づいてくる。
海の上を船の如く走り抜ける海上汽車は二人のいる入港管理局駅に入る手前で速度を落とし、じょじよに遅くなり、やがて駅の端まで行くと完全に停止し、全長100メルテ(メートル)ある客車が全てその扉を開けた。
中からガロンと同じような民族衣装を着た女性が出てきて許可証を見せるように促した。
何度も何度も徹底した許可証の確認に、さしものラリクスもお手上げだ。どうやらこの王国はかなり不法入国を憎んでいるように思える。
そう思いつつラリクスは徽章を提示すると海上汽車に乗り込んだ。
クルルスと海の上を
そんな中二人は乗客を交えて談笑をしていた。
万年ぼっちから大きな進化である。そのことに内心嬉しく思いつつも会話に割り込むことにする。
「――だからな?初めてなら絶対にロードルスパールに行ったほうがいいぜ。あと海精と契約したいなら「リリア・ララインに仲介を頼むよッ最高の海精使いだしね!!」
私が言いたかったのに、私不快ですと言わんばかりに不満げに頬を膨らませながら。
その様子に若干面くらいながらも男は話を続けた。爆ぜろ、リア充!!と荒ぶる気持ちを抑え付け―、
「お、おう。そうだな。チッ爆ぜろリア充め!」
―、訂正。出来なかった。…。
クルルスがラリクスに見えないようにしながら、鬼の様な形相で睨みつけたので男はすくみ上がる。
「ひ、ヒィ……。そ、そうだお前ら大悪党が脱獄に失敗したって話知ってるか?」
露骨な話題転換である。しかし気になるので聞く事にする。自分の話をに思った以上に興味を示してくれた事に男は嬉しくなり上機嫌に話し始めた。
決して話題転換に成功したから喜んだ訳ではない、ないったらないのだ。
「昨日な、
男の相方も口を開いた。
「何でもオウラロスと共謀した奴がいるらしいですがそいつは全く捕まって無いそうなんですよ。そいつの情報をオウラロスが握ってるらしくて中々処刑出来ないらしいですが、昨日の脱獄未遂で更に懸賞金が上がったんですよ。拿捕には34億8000万
男の相方が言うように窓の外の景色がじょじよにゆっくり過ぎるようになってくる。海上汽車の速度が遅くなってゆくようだ。
いつの間にか海上ではなく石造りの街並みを走っていた。
そして海上汽車は完全に停車し、その走りを止めた。石造りの柱に囲まれた場所で、その扉を開く。
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