第7話 その物語

目を開ける。周りを見渡すと自分の部屋の椅子に座っている。テーブルにはあの本『皆のこころ』が置いてある。時計を見る。『時代屋』で目を閉じてから2時間が経っていた。私はこの結果に『満足』をしたのか過去の自分としては『目的が完全に達成出来なかった』のか自分ではわからなくなっていた。


「この本返さなきゃな・・・」

紙を女性に渡してしまい詳しい店の住所が判らず記憶を探って『時代屋』へ向かう。

探している道の中、そこに向こうから『時代屋』の女性が歩いて来た。

「あら、譲さんどうしました?今はお店を閉めて買い物に行く所なんです」

「丁度よかった、この本を返しに来たんですよ」

「わざわざありがとうございます。でも思い出として、よろしければその本差し上げますけど」

「いいですか?では、頂きますね。何かお礼がしたいんですが・・・」

「では、コーヒーを一杯おごってくれますか?」

女性は優しく微笑んだ最初に会った時と違い寂しそうな表情はなかった。


女性と入ったコーヒー店は初めて入るお店だった。雰囲気がとてもいい。

「私、ここのコーヒー店好きなんです。季節限定のカレーもお気に入りなんです」

「そうなんですか、それは楽しみですね。ところで雪は本当にこの『時代屋』を使ったんですか?」

「・・・基本的には他のお客様の話はしないのですが、本人が言ったのと譲さんとの関係から答えますと、ご利用頂きました」

「行動を止めたりしないんですか?」

「ええ、注意書きを守って頂ければ止めたりはしません」

「私と、雪の行動は正しかったのだろうか・・・そんな事考えるんだ」

「譲さんはもう過去には戻れません。だから今のこの現実を、この時間をしっかりと見つめて下さい。そして新しい未来に進んで下さい」

「ありがとう、あなたは優しいですね。感謝します」

「そんな事ありません。私は『時代屋』としての仕事をしたまでです、コーヒーごちそうさまでした。私は先に出ますね。また、会えるといいですね。さようなら」

「はい、ではまた・・・」


女性は店を出て行った。『また、会える』と言ったけどもう出会う事は無いそんな気がしていた。鞄から本を取り出す。読んだことの無い新しい物語、その一ページ目を開いて読み始めるのであった・・・

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時代屋~あなたの過去に会ってみませんか?~ 飯田橋諭 @satosi_iidabasi

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