第2話 応接室
部屋の中は書斎の様に壁には本棚が連なっている。
「お座り下さい」
女性はソファーに座るよう手をかざした。
「少々お待ちください」
女性は部屋の外に出る。私は本棚の背表紙を見てみる。
洋書、和書、あらゆる本が並んでいる。
特に時間に関する書物は無かった。あくまでもイメージでタイムリープ物とかがあると思ったが違った、女性の趣味なのか?
ドアが開く女性はお茶をお盆に乗せて入って来た。
私も女性も対面でソファーに座る。そして女性が口を開く、
「譲さん、初めに言っておく事があります」
「なんですか?」
「過去には戻れますが、過去のあなた自身には戻りません」
「え?どういう事ですか?」
「第三者というと少し違いますが、他人になって過去に戻るのです」
「つまり、過去に行っても自分自身で行動できない?」
「はい、そうしないと『過去の自分に会いに行けない』ですから・・・」
「なんてこった、それじゃあ過去は変えられないじゃないか」
「そんな事は、ありません。過去のあなたに会って、あなたが右の道へ行こうとするところを『左に行け』と言って、過去のあなたが左に行けば過去を変える事が出来ます」
「過去の私は他人の意見を聞かないから無理だな」
「もちろん直接ではなくてもいいのです。間接的でも・・・でも過去を変える事は難しい事は承知しておいて下さい。あと、この注意書きはよく読んでおいて下さい」
女性は1枚の紙を出す。そこにはこう書かれている。
1.過去に戻った人物で犯罪を犯してはいけない。
2.過去の自分に「未来から来た自分である」と言ってはいけない。
3.過去に戻れるのは1回だけである。
過去に戻れるのは1回だけ・・・
つまり、失敗をしたら取り返しがつかないのか・・・
「どうしますか?今ならやめる事もできますけど」
やめる・・・いや、私はここで帰る訳にはいかない、この不思議な現象を逃すともう二度と過去に戻れないと体が感じていた。
「いや、やめないです。過去に行って過去を変えたいと思います」
「わかりました。譲さんの目的は判りますが言葉にする事で過去に戻る力が強まります。さあ、譲さんの目的は?」
いわゆる「言霊」というものだろうか、私は一呼吸おいて言葉にした。
「高校時代に付き合っていた彼女の最期に会いに行きたい」
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