時代屋~あなたの過去に会ってみませんか?~

飯田橋諭

第1話 来店

私は一枚の紙を持って店を探す。

「時代屋~あなたの過去に会ってみませんか?~」

そのフレーズと住所だけが書いてある。電話番号は書いていない。


道を歩いていたら紙を渡された。最初はチラシかと思ったが違った。

明らかに胡散臭い文章だが気になって仕方なかった。

私には変えたい過去があった、大きく世界は変わらない。けど私にはどうしても変えたい過去があるのだ。


密集した住宅街の中に1軒古い骨董品店があるのが見つかった、看板を見る。

「時代屋」

確かにここだ、私は引き戸を開け中に入る。

中には壺、皿、掛け軸、あらゆる物が並べられている。

煩雑ではなく綺麗になっている。

奥にある木のカウンターで人影が動いた。

「あの、すいません。時代屋はここですか?」

私が尋ねると人影はこちらを向き、

「ええ、そうですここは時代屋です」

若い20代くらいの長い黒髪の女性が笑顔で答えた。

その笑顔は優しくも少し寂しい感じがした。

「店主に会いたいのですが」

私が聞くと女性は先ほどのままの笑顔で、

「私が店主です。結構驚く方もいるのですけど、お話をお伺いします」

驚いた、もっと年配の人間を想像していたからだ。


「この紙を見て来たのですが」

私は紙を女性に渡す。女性は簡単に紙に目を通して。

「はい、わかっています。あなたも過去の自分に会いに来たのですよね」

なるほど、この紙の内容は第三者が書いたいたずらでは無いと確信した。

「あの、ここに書いてある事はどういう事ですか?あと、なぜ私が来る事を知っているのですか?」

「ここは、時代屋・・・お客様が来る事は前から知っていました。『飯野 譲』さん」

まだ、名乗っていないのに私の名前を知っているのか?そうか、ここに行く事もわかっているのか。

「どうぞ、こちらへ」

女性は『応接室』と書かれたドアを開け入るように促した。私は何故か抵抗する事なく部屋に入っていった。

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