昔も今も、これからも変わらない日々。
濡れ
振り向けば木ノ下さんが苦笑して言った。
「中で待たないのですか?」
あきは
赤兎と訪れたここ
「あの子は本当に大物ですね。本人は気づいているかわかりませんが」
あきは飲み終えた湯呑みを手の中で弄んだ。この人すら見抜く執着をただ
「いいんです。これからじっくりわからせていきますから。私があの子をどれほど必要としているか」
「……お手柔らかにお願いしますね」
(頑張って下さい赤兎くん。相手は二乃助さんにすら落とせなかった
この
(彼女の傷を癒せるのは貴方だけかもしれませんね)
赤兎くん。本来は唯一の知り合いである自分の役目なのかもしれないが、そんなことを考えるだけでも
(悔やむなら、いつか殺してやるから生きてろって)
要約するとこうだが、今思うと結構凄いこと言われてる。しかも会ったら実行してくるとは思いにもよらなかった。まぁそれもふりであった訳だが、あの時は本当に寿命が縮む思いをした。
(しかしここまで変わらずにいる人も珍しい)
初めて出逢った時を思い出す。そう、あれは
『それいじょうちかづいてみなさい。泣かしますよ』
うん! いやー本当に変わってない。叶絵さんに聞こえないように
「さっきからナニ
「せめてそこは
苦情を言えば鼻で笑われた。ほんっっっとぉぉおに変わらない。普通は成長すると丸くなったりするものではないのか。
「私に口答えするなんて偉くなりましたね」
「すみません! あの、申し訳ないのですが、ここには弟子の目もあるので、その……出来れば
「ありもしない威厳をどう保つのですか?」
「いやもう、ほんと勘弁して下さい!」
赤兎くん! 早く戻って来て! 私の信用が地に落ちる前に!
ちらちらとこちらを窺っていた弟子たちを見ると一斉に視線を逸らされた。あ、もう手遅れかも。だが、この日を境に壮碁は弟子たちから慕われるようになった。曰く、自分たちくらいは優しくしなければ可哀想という理由で。壮碁は泣いた。色々な意味で。
「ご主人! お待たせ!」
「待ってましたよ……!」
「え、なんでこの人泣いてんの」
真っ先に彼の帰還を喜んだのは自分だった。これが泣かずにいられるか!
「お帰りなさい赤兎。この人のことは気にしなくていいですよ。泣くのが趣味みたいなものですから」
「へぇ、変わった趣味だね!」
赤兎くん、そんなに簡単に信じないで。キラキラした目を向けないで。く……っ、否定しづらい。
「もう良かったのですか?」
「うん! スッキリしたー」
「? よくわかりませんが、スッキリできて良かったですね」
ふわりと微笑む彼女におや? と思う。叶絵さんや二乃助さんに向けるどの笑みとも違うことに気がついた。
(あの人たちの前の彼女は気を張っているように見えた)
きっと心配を掛けない為だろう。叶絵さんよりも大人っぽく振る舞い、二乃助さんと対等に接する。そんな印象を受けた。が、この少年に対しては
(これはひょっとすると)
そこまで考え
(墓を抜け出してまで会いに行くくらいだからなぁ)
「じゃあご主人、おうちに帰ろっか」
「ゆっくりして行かなくてもいいんですか?」
「うん! 用は済んだからね!」
用? 嫌な予感を覚えた。彼女と赤兎くんと別れたその夜、夢枕に二乃助さんが現れて散々
(おまえ今お似合いとか思っただろ!)
「人の思考を読まないで下さい! というか眠らせて下さい!」
(嫌だ!)
「駄々こねないで下さいよ! 自分、朝早くからお
(知るか。おれの話を優先しろ)
知ってます? この人生きてたら自分より六つも年上なんですよ?
「私じゃなくて彼女のところに行けばいいでしょうに」
(馬鹿野郎! こんな情けねぇ姿あいつに
私にはいいのか。この人カッコつけだもんなぁ。
(聞こえてっぞこの野郎)
ああ
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