探偵はサブカル女子を目指す
「お姉ちゃん。サブカル女子ってどうしたらなれるの?」
「アタシにもよく分かんないよ、
「王子様みたいのがサブカル女子かな?」
「ううん。グラムロックは多分サブカルじゃないよ。そもそも女子じゃないし」
と、アタシと桜花とで軽く予習している所へ王子様がニコニコしながら現れた。洋館ブランチ合宿所のテーブルに、がさっ、と一山のアイテムたちを置く。
「さあ。
「いいんだけど・・・王子様のセンスって大丈夫? そもそもグラムロックって1970年代あたりなんでしょ?」
「趣旨は普遍でしょ」
なんだそれは。
「じゃ、まずは音楽から。ジャジャン!」
・ サイケデリック・ファーズ:「プリティ・イン・ピンク」
・ XTC:「タワーズ・オブ・ロンドン」
・ ニュー・オーダー:「ブルー・マンデー」
・ トーキング・ヘッズ:「アンド・シー・ワズ」
・ 細野晴臣:「はらいそ」
・ あがた森魚:「バンドネオンの豹」
「ちょっと、王子様」
「なんだい、緋糸クン」
「音楽に詳しくないアタシでも明らかにサブカル女子向けじゃないと思うんだけど」
「まあまあ。次は映画ね」
「え。映画も」
「そうよ。ダララララララ」
・ ラスト・タンゴ・イン・パリ
・ ソナチネ
・ ア・ホーマンス
・ ゲッタウェイ
・ 僕は天使ぢゃないよ
「単に王子様の趣味で選んでるだけなんじゃないの?」
「あー、分かったー。お姉ちゃんを王子様好みの女にするんだー」
「桜花! どこでそんな言い回しを!」
「はいはいはい。最後に、漫画ね」
・ 小林じんこ:「風呂上がりの夜空に」
・ 大友克洋:「さよならにっぽん」
・ 高橋留美子:「うる星やつら」
・ 岩明均:「骨の音」
「ごめんね王子様。やっぱりアタシ文化の王道がいい」
「あら。全部面白いわよ? 懐かしいし」
「ほらあ! 今、懐かしいって言った!」
「あ、あら・・・まあ、普遍性のある作品は既視感というか懐かしさを感じるわよね」
「あーあ。王子様、大体サブカル女子を駆逐するって、その長閑なテロリストって何者なんですか」
「たった、1人で渋谷系ファンクラブの鶯谷支部を壊滅させた凄腕の男よ!」
凄さが分かんないし、興味もないし。
え?
ちょっと待って。
「1人で?」
「そうよ」
「組織じゃないの?」
「1人だけど組織ね。武器の調達や死体の始末だとかはアウトソーシングできる優秀な業者を抱えてるか」
「ごめん、王子様。今、『死体』って言った?」
「うん」
「どうしてファンクラブを壊滅させるだけで死体ができるの!?」
「だからソイツは中二病が極限に達した正真正銘のサイケデリック野郎なのよ! 非公表だけど鶯谷の事件では5人殺されたわ。警官含め」
「なにそれ」
「だからよ。アタシを仮釈放させてでもソイツを捕まえたいのは。極秘だから緋糸クンとはいえ情報を小出しにさせてもらうけど、次の犯行予告は3日後よ。サブカル系のロックバンドがライブハウスでやるイベントよ。さ、サッサと詰め込んで!」
サブカルチャーに触れる。
命がけで。
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