探偵は冷静にコトに当たる
アタシたちは本当に警察に通報しないという選択をした。
それは幼稚園の園長先生と見送りに来ていた父兄の中での多数決で決めたことだった。
アタシは主張した。
「仮に通報しないとして、解決の方法は? どなたか具体案がおありですか? わたしはすぐに通報すべきだと思います」
「でももしそれで本当に犯人に通報が知られて、警察が来る前に誰か殺されたら」
「そ、そうですよ! 誰が責任を取るんですか!?」
他にも慎重論が出る中、アタシはもう一度だけ発言した。
「責任なんて誰も取れません。それに皆さんは責任を果たすためにお子さんを育てておられるんですか?」
「と、当然よ。親としての責任を果たさないと」
「・・・わかりました。通報しないで救助する方法を考えましょう」
すぐ来て、と王子様に連絡したら田代さんと一緒に幼稚園に3分で来てくれたんだ。
「で? 具体的にどう動くか考えた方はいらっしゃるんですか? 園長先生は?」
「わ、わたしは女ですから・・・」
「わたしと田代以外全員女性じゃないですか。じゃあ、わたしと田代に考えろと?」
「は、はい・・・できれば・・・」
「仕方ないですね。
「はい」
「アナタの考えを聞かせてくれるかしら」
「はい。バスは運行会社にGPSで位置を管理されています。ですからとりあえずは予定している遠足のコースをそのまま走るでしょう」
「犯人がそれを知らなかったら?」
「運転手さんが伝えるでしょう」
「ふむ。確率としてはそれが一番高いわね。田代」
「ああ」
「アナタの考えは?」
「GPSで管理されているって前提の緋糸の意見は合ってるが、コースは変えるだろう」
「ふむ。田代、なぜ?」
「コース通り走ってても、何も起こらないからだ」
「田代さん、アタシは高速には必ず乗ると思うんですけど?」
「俺もその意見には賛成だ、緋糸。移動距離を短くするのなら幼稚園の観光バスなんてリスクの高い人質を取る必要はない」
「田代、何kmぐらい走れるの」
「最新車種なら燃費は高速を使えば5km/Lはいけるだろう。軽油タンクには300Lほど入るから給油なしで1,500kmは走れる」
「緋糸クン、一番近い
「
「よし、ベスパで行くわよ。路肩をすり抜けて追うことも想定よ」
「ちょ! そんなことして犯人を刺激したらどうするんですか!?」
母親の一人が興奮して叫んだ。
王子様は落ち着いた声で訊いた。
「アナタのお子さんは、『ボクを一番最初に殺して』と言えるお子さんですか?」
「え・・・・・・・・・・言えません」
「では、行きます」
王子様がハンドルを握り田代さんが後部座席、アタシがサイドカー。
アタシは分かってる。
桜花は、『わたしから殺してください』と言う子だ。
だから、一人も死なせずに解決する。
するんだ!
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