探偵は戦いに身を投じる
探偵は危機一髪
「
アタシは喉の粘膜が消し飛ぶぐらいの音圧で叫んだんだけど、桜花に届いただろうか。
届いたとしても届かなかったとしても、桜花は幼稚園の子たちと一緒にバスジャックに連れ去られちゃったんだよ。
「バスジャック!?」
「それはまた古風ねー」
「田代さん、王子様、どうしよう。桜花たちが・・・」
「警察は?」
「通報したら一人ずつ殺すって」
「決まり文句ねー」
なんでこんなことになったのか今でもわかんないけど、多分遠足で向かう場所が水族館だっていうのがまずかったんだろうと思う。
今日は桜花の幼稚園の年に一度の遠足。
快晴だし、お弁当だってアタシの技術の粋を結集して誰から見ても羨まれる献立と盛り付けにした。
出来上がりが結構ギリギリになったので、園を出発少し前の時間に自転車でアタシが届けに行ったら、お見送りのお母さんが何人も泣いてた。
日帰りの遠足なのに大げさだなあ、って思ったら、運転席の脇にフルフェイスのヘルメットを被り、一枚皮のライダースーツを着た人間が立ってて、右手に金属バットをぶら下げている。
劇かなにかかな、っていう現実逃避をしたかったけど、そいつが、がキィン! と運転席後部の鉄柱を力任せに打ったのを見て、冗談じゃないんだな、って認識した。
「あ、あの! 警察には!?」
「連絡したら、一人ずつ殺すって、あの男が・・・」
答えてくれたお母さんも泣いてしまっていてアタシにそう言うのがやっとだった。
それに、そのお母さんは男だ、って言ったけど、アタシは性別を特定することはできないと思った。
一度も声を出していないし、スーツのラインが見ようによっては曲線が多い感じもするから。
「桜花あっ! お弁当は!?」
アタシは作りたてのお弁当を手に痛恨の表情で立ち尽くした。
腹が減っては戦はできぬ。
いくら桜花でもお昼抜きではバスジャックを叩きのめせるかどうか不安だったのだ。
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