探偵は弱き者を寄せ集める
おまけにカワイイ!
あ、思わず興奮しちゃった。
でもやっぱり桜花はさすがアタシの妹。ホテルバイキングにあるチョコレート・フォンデュのタワーみたいに豊かな発想が溢れ出てるわ。
桜花はね、こう言ったんだ。
「お姉ちゃん。お金払って貰えなくて困ってる人たちと協力し合えばいいんじゃない?」
早速アタシたちは破産事件で配られた債権者リストを持って超絶零細企業の社長さんたちを訪問したんだ。
グラムロック・ファッションの王子様と 年端もいかぬ小娘のアタシともっと年端もいかない幼女の桜花と3人で。
ベスパのサイドカーに乗っかって。
「没落社さん、こんにちはー。あら、社長さん!? 景気はいかが!?」
「は、はあ? なんだアンタらは?」
「王子探偵社の王子でございまーす」
「探偵? ああそういや債権者リストに探偵なんているから面白いなって思ってたけど・・・景気? A社が5百万払ってくれねえからよー、資金繰りがボロボロだよ。親戚じゅうに土下座して回ってようやく今月の決済乗り切れるかどうか、ってところさ」
「社長。高利貸しとか頼ってないでしょうね?」
「怖くてそこまでは。でもよ。お偉いさんにしたら5百万円なんてはした金かもしれんがよ、俺らにしちゃ血尿出して必死こいてやった仕事でようやく稼げるぐらいの金額さ。そこから仕入業社やら社員の給料やら健康保険やら払ってよ。おっと、税金だってウチは節税なんてセコいことせずにきっちり払ってるぜ!」
「そうよねそうよね。で、A社とB県の間の『消えた10億円』の話は知ってる?」
「当たり前さ! だから俺はやり切れねえんだよ! 大元がB県の発注でそこが頼んだコンサルだって言ったら普通は信用するぜ? それとも県だからって信用した俺がバカなのかい?」
「いいえ。現にわたしも経営者だけどこのテのリスクまではやってらんないわよ。それでねえ、社長」
「ああ」
「わたしは探偵よ」
「そりゃそうだ」
「探偵の仕事はなんだと思う?」
王子様がそう言うと、没落社の社長さんと王子様は、にたあ、と笑いあった。ついでにアタシと桜花も、にたあ、と笑ったよ。
比較的大きな企業はB県と色々しがらみがあるかもしれないから、リストの中の『超絶零細企業』をアタシたちはベスパで回った。
それでね、やられたらやり返す『王道探偵ドラマ』を地でいく中二病のアタシたちのために資料や情報提供の協力を得たよ。
ただ、既に自殺しちゃってる社長さんが何人かいた。
ほんと。
クソだね、この世は。
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