探偵は義務を果たす

緋糸ひいとクン、探偵社は慈善事業じゃないわ。収益を上げ、社員にお給料を支払う株式会社よ』

「う、うん」

『そして緋糸クンとは雇用契約を結んでいる。アナタは職務を果たす義務がありそれは業務命令という形でわたしが指示を出す。それから、田代は毎期きちんと事業計画を立案して株主の承認を得ている。といっても大株主はわたしだけどね』

「事業計画・・・」

『アナタの勤務時間から給与体系から雇用保険、健康保険、すべて法律とあとは我が社の事業計画と内部規定に基づいて整然と業務が遂行される。もしかして零細企業だからって、舐めてた?』

「ち、違う! アタシはそんないい加減な気持ちじゃない!」

『気持ちを形にする。それが大人の勤めよ』


 電話を切って放心状態のわたしにエインが声を掛けて来た。


緋糸ひいと先輩、大丈夫ですか?」

「エイン、あのね」

「はい」

「アタシはやっぱり復学できない。とても仕事と両方はこなせない」

「え。でも、中学は義務教育ですよ!?」

「エイン。目の前に生きるか死ぬかの仕事してる人がいてそれを手伝うことと、将来のために勉強すること。どっちが義務かな」

「・・・どっちもですよ」

「なら、アタシは目の前の死にそうな人間を選ぶよ」


 アタシは、校長に電話した。

 復学は今はできない、って。

 それからこう言ったんだ。


「アタシを女子柔道部の監督に就任させてください!」

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