探偵は3つの属性を操る

探偵はJCである

「きちんと卒業しませんか?」

「お帰りください」


 アタシが卒業保留中の中学の校長と教頭が自宅にやってきて、アタシの父親が一言の下に切って捨てた。


「ねえ・・・よかったのかしら?」

「何がだい、母さん」

「だって、やっぱり中学は義務教育だから緋糸ひいとの将来にどうしても・・・」

「母さん。将来も何も緋糸は家事もこなし、この間は王子さんが正社員にしてくださったじゃないか。既に大人として自立している」

「でも・・・」

「緋糸が中学時代にやったことは大徹だいてつさんの遺訓と何ら違わない。卑怯を懲らしめ正しき者を助けたじゃないか」

「でも・・・そのいじめられてた男の子も結局自殺して」

「それでも、緋糸は彼を救ったんだ」


 大徹さんっていうのは戊辰戦争で戦死したウチのご先祖だ。武士だった。


 父親はアタシが中学を卒業保留となって以来ずっとこう言い続け、当初も学校側に対して筋道立ててものの道理を説明しようとした。だけどどうしたって暴力に訴えたアタシは分が悪かった。


 ただ、父親が終始アタシをまるで『おんな武士』みたいに扱ってくれたので救われてる。


 ところがね。

 校長と教頭がスゴスゴと帰った翌日、最終兵器がやってきたのよ。


宮内くないエイン、3年生です。生徒会長やってます。緋糸先輩、わたしたちと一緒に卒業しましょう!」


 まっすぐな目。それも、グリーンの目。アタシがコスプレした時のカラーコンタクトじゃなくって、ナチュラルなグリーン・アイ。


 アタシの中学の女子柔道部の後輩なんだよねー。結局同学年になっちゃったけど。


「お父さん! 緋糸先輩をわたしたちにお返しください!」

「宮内さん。緋糸を要らないと言ったのは学校ですよ?」

「学校のことなんか知りません。でもわたしには緋糸先輩が必要なんです」


 アタシだって鋼の精神なんか持ってない。そもそもが永世中立国であろうとしたアタシだもの。そして事件があってからのアタシは分かりやすい分類としてはニートだったわけだもの。


「エインちゃん。アタシが戻ったって居場所はないし」

「あります! 緋糸先輩」

「え」

「一緒に全中目指しましょう!」


 アタシが柔道部員だったのは他に格闘系の部活がなかったからなんだけどね。

 ぶちのめせbeat itの動きは文字通り打撃が中心だからいつものクセが出てしまったら柔道じゃ即反則だもんね。


 そんなことを考えてるのがそもそも面倒くさくなったからこう答えた。


「社長に訊いてみる」


 アタシはその場で王子様に電話したよ。


『大人を舐めないでね』


 それが王子様の返事だった。


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