探偵はようやく変装というテクニックに気づく
「かわいいよ、
「あ、ありがとうございます、
アタシは生まれて初めてメイクをした。
変装というかコスプレは何度かやったけど基本すっぴんだったから。
そして男装の麗人である響さんからもお褒めの言葉をいただいた。
ただ、メイクしてくれたのが王子様だっていうのがなあ・・・
「うーん。緋糸クン、美しいわ」
「あ、ありがとう」
「姫と思いっきりデートしてきなさい」
「こら王子」
「なによ」
「緋糸ちゃんはまだ男の子とデートとかしたことないって言ってたろ? 俺なんかとのをデートってカウントしたら緋糸ちゃんに失礼だぞ」
「ひ、響さん。そんなに気になさらないでください。響さんカッコいいですからラッキーかな、って」
「なに緋糸ちゃん。アナタ女に興味あるの?」
「いえいえっ! 決してそういうわけじゃ」
「ほら来たわよ」
王子様がSNSの情報を分析し尽くした結果、今日はターゲットが通うジムのごく少数での飲み会があるらしい。インストラクターが自慢げに拡散してたそうだ。
ターゲットがそのイタリアンレストランに数人で入って行くのを見届けてからアタシと響さんはうん、と頷いた。既に2人分の予約を入れてある。
「緋糸ちゃん、最終チェック。ヒールは?」
「はい、大丈夫。歩けます」
紺のハイヒールでやっぱり紺のリボンがついた可愛らし目のやつ。
「ワンピース」
「OKです。静電気も大丈夫です」
白に近い薄いエメラルド色のふうわりワンピース。
「バッグ」
「はい・・・荷物も入れすぎてません」
バッグはやや意表を突いたトートバッグ。平べったいやつで大学の教養課程の子が無造作にノートとか突っ込めるざっくばらんなやつ。
「メイクは・・・うん! バッチリ! かわいいよ」
「は・・・い・・・」
元々まつげは長い方なのでそれを活かしてくるんと上に。爪は短く無色透明のマニキュアを塗って、リップは潤いと光沢の両方が表現できるのを。
そして頰に薄く紅は差したけど、周囲の『かわいい』っていう身に余るお言葉の数々に自分の頰自体が赫らむのが分かったよ。
響さんはラルフ・ローレンで統一。濃紺のジャケットにクリーム色のパンツ、茶のベルトに茶のローファー。
うーん。
カッコいい!
どこからどう見ても男女の恋人同士、のはず。
「いらっしゃいませ」
「予約してた王子です」
てへっ、という感じで舌を出す響さん。お茶目なところもカッコいい。
並んで入ると一瞬、視線がアタシたちの方に集まったような気がした。
「はは。目立ってる目立ってる」
響さんは自分たちが注目されることがまんざらじゃないみたいだけど、いいのかなあ、目立って。
でもこれが功を奏しちゃうんだよね。
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