探偵は好きな子にも全力を尽くす
先鋒、副将、大将戦という流れになった。訳が分かんないけどまあいいのかな。
「こんな狭い所でやるのか」
「タケルくん、家屋の中では飛び道具は不利で長槍も不利。短刀が一番。場所に合わせたせんじゅつが必要だってお父さんが言ってた」
「し、知ってるよそんなこと!
うーん。タケルくん、まだ桜花の相手は無理じゃないかなあ。
「さ、始めちゃって!」
王子様の合図で2人はフットワークを使って小刻みに動き始めた。まあ、初動でタケルくんの運動能力が極めて高いのは分かったけど、人間力はどうかな?
「えい」
「わっ!」
桜花は土足でも躊躇せずにテーブルの上に飛び乗って一気にタケルくんとの間合いを詰めた。驚いてタケルくんが尻餅をついた時、
「はい、勝負あった! 桜花クンの勝ちーっ!」
王子様が告げたけどタケルくんはまだ起き上がって続けようとする。
「まだだ! まだ勝負はついてない!」
「タケル! 見苦しいぞ!」
一喝したのはカンジくんだった。
そのまま桜花の前に歩み寄る。
「桜花さん、見事だった」
「ううん。たまたま」
「そうだ! たまたま俺がつまづいて転んだだけだ!」
「この、バカ者! 本当にこれが敵との殺し合いでもたまたまなのか!」
「だ、だって兄ちゃん・・・」
「死んでしまってそれでもたまたまなのか! 技だけでなく心根もまだまだ精進せよ!」
桜花がアタシに囁いてきた。
「お、お姉ちゃん、なんか厳しいね。お父さんは優しく教えてくれるのにね」
「アタシたちは1歳になる前からやってるからね・・・今更厳しくする必要がないのよ」
「ひ、緋糸さん、それは誠かっ!?」
「え」
「1歳になる前といえばまだ立って歩けぬほどではないか!」
「あの・・・アタシたち、生後半年で立って歩かされてたので・・・別にそんな大げさなことでは」
「な!? ううむ・・・ますますアナタとの手合わせが楽しみだ!」
「ほらほら。なら始めるわよ。よーい、始め!」
王子様が間髪入れずにスタートさせたけど・・・なるほど。カンジくんは相当な鍛錬を積んでるね。アタシの目から見ても隙がまったく無いな。
「ふっ!」
「せっ」
いきなり蹴りから入るところも実戦を知り尽くしてる。出し惜しみしてたら死んじゃうからね。そしてアタシに考える暇を与えない。
「ていていていていてい!」
「や、や、や、やっ」
「ショウアオウっ!」
うわ、来た。踵落としだ。
なら。
「えいっ」
「おわあっ!?」
落ちてくるカンジくんの踵より速いスピードでアタシはつま先を蹴り上げてカンジくんの鼻頭を、スン、と掠めた。鼻の先端から血がポトっ、と一滴したたった。
「勝負あった! 緋糸クンの勝ち!」
「うーーーーん。完敗だ!」
「た、たまたまだよカンジくん」
「いや、緋糸さん。アナタの動きにはずっと余裕があった。僕の攻撃をすべて連動した動きで避けてなおかつ最初から最後まで平常心のままだった。さすが赤子の頃から戦いに身を投じてきただけの凄みがある」
「あの、投じてはいないんだけど」
「さあ、最後は大将戦だな!」
美人、だよね。
「王子、本気出せよ!」
「あら。アナタこそわたしが好きな相手だからって手加減しちゃダメよ」
「うるさい! 今日こそお前を叩きのめして花婿にしてくれるっ!」
どっかよそでやってくれないかな。
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