探偵は朗らかに暴力に晒される
アウトレットの警備員は銃など持つわけがないからアタシは即座に言ったんだ。
「逃げて!」
警備員2人は当然だけどアタシの言葉に従って職務放棄するわけにいかず、アロハ軍団に英語で訊いた。
「What are you doing here ?」
「Breathing」
Ha,ha,ha, ho-ho-ho !
と馬鹿笑いをするカルテット。警備員が警棒に手をかけた時、
「ウゴクナ!」
そう言ってドレッド・ヘアが
周囲のギャラリーと警備員はビビってどよめいてるけどアタシも王子様も別に動じない。だって桜花がこの程度のマフィアごときに不覚をとるはずないから。
「スパゲティみたい」
桜花がドレッド・ヘアの髪の毛をそう描写したら、ぷ、と吹き出す大学生風の男の子がいた。
「ワラウナトイッタハズダ!」
笑うななんて一言も言ってなかったけど、ドレッド・ヘアが大学生風にサングラスを投げつけた。なにやら不自然な軌道を描いてサングラスは大学生の頰を痛打し、再びドレッド・ヘアの手に戻る。
「ブーメランネ」
周囲が唖然とする中、王子様が真顔で呟いた。
「やるわね。アロハ探偵カルテット=エンジェル・ダスターの使用武器を完コピしてるわ」
素朴な疑問がわいた。
「王子様、アロハ探偵カルテットは仲間なんじゃないの?」
「ちっちっちっ。
桜花が一番順応速度が速かった。黒レザーのミニスカから膝を折り曲げた脛だけの動きで、て! とドレッド・ヘアの股から通して尾てい骨を蹴った。
「ウオア!」
桜花がアタシと王子様のポジションに戻って来て戦闘が始まった。
ギャラリーたちが一斉にスマホを掲げる。
「緋糸クン! ホウル・ザ・ヒールよ!」
「え? え?」
なんじゃそりゃと思ったけど語感から赤のレザーパンツに合わせた赤いハイヒールを投げた。つまり、『放る・ザ・ヒール』だろうと。
「グワア!」
わざとらしいリアクションなのか本気の反応なのか、とにかくツクツクのピンヒールが向こう脛に突き刺さって痛くないわけがない。スキンヘッドが足を抑えてウッドデッキを転げ回った。
「桜花クン、ハート・ヒップ・アタック!」
「ていっ!」
桜花は
「ウオイア!」
これも演技か本気かわからない動作でウッドデッキに崩れ落ちる。
「じゃあ、行くわよ! トリプル・サタン・デストロイ!」
もはや文法もなにもない、一体何語なのかすらわけが分からない王子様の掛け声で王子様とアタシと桜花はカルテットに向かって突進していた。王子様を真ん中に手を繋ぎ、4人を取り囲んで円陣の中に閉じ込めるようにして、その技を放った。
「トリプル、サタン、デストロイ〜っ!」
アタシは恥ずかしさと滑稽さとで自分のやっていることを自嘲して笑いそうになったけど、なんとか堪えてクルクルと高速回転しながらそれぞれの鋲がついたベルトで4人を縛り上げていた。
「うおおおおーっ」
ドスの効いた男の子たちの声と、
「きゃーっ!♡」
とこれは王子様への声援なんだろうか、女の子たちの歓声がアウトレットの丁度ウッドデッキのまるでフラット・ステージのようなエリアで鳴り響き、スマホが彼ら彼女らの頭上高くズラっと掲げられ、拍手が沸き起こった。
「いやー、面白いイベントだった!」
「なになに? 『ビジネス探偵』? 俺速攻レンタルするわ!」
「ねえねえ、あのちっこい女の子のコスプレってどこでできるの?」
次第にさわさわとギャラリーたちの喧騒が小さくなった頃、パトカーがサイレンを控えめにしてやってきた。
スミザリーン・ファミリーの4人と、王子探偵社の3人は、揃って警察に連行された。
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