探偵はファミリー層にウケたい

 スミザリーン・ファミリーが日本で何をやろうとしてるんだろう。

 アタシは王子様から聞いただけの情報でもってそのマフィアのファミリーを想像する。きっと他人の不幸を特に意識せずに冷静に扱うことができるんだろう。そうでないと人間を殺したり銃で傷つけるなどという異常な行為を日常茶飯のように感じることのできる人間。いや、生物か。そういうモノたちにはできることなら近づきたくない。桜花おうかならなおさらだよ。

 でも、そういう時に限っていとも簡単にそのモノたちはアタシの視界に割り込んできた。


 4人のアロハシャツを着た、アメリカンな男たち。

 髪型はパンク、アフロ、ドレッド、スキンヘッド。

 全員サングラスをかけている。

 白人は1人もいない。多分プエルトリコ系。

 陽気なんだろうか? 陰気なんだろうか?

 そもそもなんでアロハシャツなんだろうか?

 一番背の低い、パンク風の髪型の男がアタシに質問してきた。


「エエト・・・アナタハ、ココノ、ボスデスカ?」

「え!?」

「イチバンツヨソウニミエマシタ」


 もう一度まじまじとその男を見る。

 パンクのようなツクツクの髪型にシャープな顎の輪郭、チープだけど渋いサングラス。

 でも、アロハシャツのせいで冗談のようにしか見えない。


「なんでアロハ?」


 うわ。

 王子様、場の雰囲気とか考えた方がいいよ。

 でも、パンクヘアーが思いもかけぬ反応をした。


「ナンデ『ギルティ』ノコスプレ?」

「おおっ!」


 王子様はパンクヘアーの両手を掴んでブンブンと感激する。


「ビジネス探偵、知ってるんだ!?」

「ナメテモラッチャコマリマス。ワタシタチハビジネスタンテイファンクラブ、ノース・アメリカ・ブランチノカンブデス」


 ビジネス探偵ファンクラブ北米支局の幹部。


 なんだいそれは!?


「もしかしてアナタ達、『エンジェル・ダスター』のコスプレ!?」

「モチロン!」


 桜花おうかが王子様に訊いてくれた。


「それなに?」

「桜花クン、よく訊いてくれたわ! ビジネス探偵第3章第14話『俺たちは探偵天使だ!』の後半5分30秒に一瞬だけ登場する主人公ギルティのかつての仲間、『アロハ探偵カルテット』よ!」

「グレイト!」

「ラブリー!」

「ビューティフル!」

「ファンタスティック!」


 スミザリーン・ファミリーと思われるマフィアたちが扮する『アロハ探偵カルテット』のコスプレ。


 ここは一体どこなの?

 アタシは一体誰でなんのためにビジネス探偵の『フォーギブ』のコスプレしてるの?


 そう思ってると警備員が急行してきた。


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