探偵はフクロウを正当に評価する
「エサもわたしがあげる」
「桜花、意味わかって言ってる?」
フクロウにあげる餌はスーパーの肉じゃダメ。血液や体液が抜かれてるから栄養が無くてフクロウの血肉にならない。
マウスやヒヨコを餌にするんだけど、さすがに生きてるのを捕まえてきてということまでは実社会で生きるアタシたちに無理だから、血肉もあるそのままの姿で冷凍されたマウスを解凍し、下処理をしてからフクロウに与える。
毛も生えたそのまんまの姿のマウスをね、桜花は
「う・・・おえぇ・・・」
容姿カワイイ桜花だって、マウスの皮を剥ぎ、ハサミで切る時は嘔吐した。
カワイイ幼稚園年中さんの桜花の嘔吐物までカワイイなんて言うほどアタシは小娘でも異常な嗜好でもない。
「おい、オマエ。やるっつったんだから、やれよな」
田代さんは冷酷なまでに桜花を子供扱いしなかった。
でも、それが田代さんと言う人間の凄さだと思う。
そしてわたしが子供の頃に布団の中でおばあちゃんがしてくれた話を何度も思い出していた。
「
「え。お仕事なのに、殺しちゃダメなの?」
「ダメなんだよ緋糸ちゃん。でも、そのダメなことをね、アタシたちの代わりにやってくれてるから漁師さんは偉いんだよ」
自分が食べるモノ以上に、桜花にとってはハヤテが食べるための小動物という生命を自分のふっくらした暖かな手で処理することが、おばあちゃんの言った言葉の意味を噛み締めさせるだろう。
「いいか、桜花。ハヤテを決して猫可愛がりするなよ」
「フクロウだから猫可愛がりしないよ、田代さん」
「あのなあ。要は甘やかすな、ってことだ。ハヤテから野性が消えたら捜索能力も消え去ってしまう」
「そうしたらどうなるの?」
「殺処分しかないな」
「え」
「当然だろう? ハヤテは俺のパートナーだ。仕事をするために俺とハヤテは一緒に暮らしてる。かわいそうなんじゃない、ハヤテのそれが生き様なんだ」
「じゃあ、田代さんが仕事できなくなったら?」
「鋭いな、桜花。自殺でもしたらいいのかもしれんがそうもいかない。引退してロートルの俺でも役に立てる仕事をするさ。神社の掃除とか補修の奉仕とかな」
アタシは全然意外とも冗談とも捉えなかった。田代さんならきっとそうするだろう。
田代さんて、凄いな。
でもそんな田代さんを部下に持つ王子様も、やっぱり凄いんだろうな。
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