探偵は属性を見極める

 アタシのモノローグの最中に王子様は次の動きを指示し、そしてアタシたち3人はベスパのサイドカーで、ギタリストにして一児の母であろうその女の子の『ライブハウス』に向かったんだ。


「いた!」


 3人して密やかに声を上げたよ。


 それは王子様が喫茶店のマスターの極めて事実に近いであろう推理をなぞった、その通りのお店だったんだ。

 テーブルが5つあるだけの、半地下のカフェ兼ライブハウス。


 ギタリストはウェイトレスとして働いていた。


「ドラマーが探してるわ、ギタリスト」


 会うなり王子様は彼女に向かってそう言った。

 言われた意味は分かっただろう。

 自分を探しに来たのだと。ついに逃げおおせなかったのかと。


「オーナー、ごめん。ちょっと行ってくる」

「ああ。待ってるよ」


 映画みたいなセリフを交わしてギタリストとオーナーは別れる。

 ギタリストが王子様に訊いた。


「ドラマーは、叩いてるの?」

「いいえ。叩いてない」

「じゃあ、わたしが行かなきゃね」


 ウェイトレスであり母親であり逃亡者である彼女はそういう属性の何よりも。


 ギタリストだった。

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