推理はLOVEから始まる
王子様のそれは推理などではなく。
『バンドのファンだった』というオチ。
一体いつになったら王子様は名探偵としての才能の片鱗を見せてくれるのだろうか。
「
「え。どこへ?」
「失踪した彼女のところへですよ。その前に、田代に資材を持って来てもらいましょう」
「え!? ギターの女の子の居場所がほんとに分かったの!?」
「王子様、スゴい!」
桜花も王子様をべた褒める。
そうこうしている内に田代さんが洋館ブランチにやってきた。
「社長。なんなんだ、このリクエストは!?」
「おお、田代。ご苦労だったね。品物も上等の奴だね」
「・・・ああ。まずギターのピック。それからループステーション。それと、塩大福って、なんなんだよ」
「全部ギタリストの彼女が好きなものだ。彼女をおびきよせるのさ。このエサで」
桜花が核心をつくことを言った。
「王子様、動物じゃないんだからエサでは釣れないと思うよ」
「お、桜花クンてやっぱり辛辣ね。じゃあ、どうすればいいと思う?」
「ドラマーさんにみれんがあるかも知れないから、ドラマーさんをエサにしたらどうかな?」
「え!? 俺!? いや・・・ちょっとどうかな? 俺に愛想尽かしていなくなったんだとしたら、未練なんかあるかな?」
わたしはわたし以外のみんなのやり取りを聞いていて、なんだか異世界の遠い音のように感じる。だから、言ってみた。
「ドラマーさん。アナタがライブやれば何か反応あるんじゃないの?」
「え!?」
わたしはこのことに関してはかなり強い確信を持っている。
ドラマーさんとギタリストの女の子がやっていたバンドがまだ解散していないのであれば、折に触れてギタリストの彼女はネットやSNSでバンドの検索を行っているのではないだろうか。
そしてまだ自分がメンバーのままでい続けているのかどうか、確認をしているのではないだろうか。
わたしも、卒業もせず、かといって登校もしない中学校のツイッターアカウントを時折覗く。
いいねやリツイートはわたしの素性がばれてしまうのでやってはいないけれども。
多分、失踪したギタリストの女の子は、中学を卒業保留中であるわたしと同じココロを持ってるんじゃないかな。
って思うのさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます