第50話 まっすぐ
ザルク村にあるタイジュの家は、隣の家はどこなのかと探してしまうくらいの間が空いている田舎の一軒家だ。男2人暮らしにしてはすっきりと片付けられているリビングでサーシャはガイの帰りを今か今かと待っていた。
「全く。こんな通達を出されるとはあやつも詰めが甘いのう」
タイジュが入れてくれたローズティーを飲みながらぶつくさとぼやく。
「人を疑うことを知らない男ですからのう……ガイは」
サーシャの向かい側にある黒い皮張りのソファに腰かけて、タイジュが穏やかに笑う。
「マリーに似て、まっすぐなのか」
いい意味で言えば、純粋。悪い意味で言えば、単純。国王になった時にこの性格がどう出るのかは神のみぞ知る世界である。ちょっと怖いところもあった。
「そうでございましょう。意志の強い瞳はどちらかというと母親似だと存じます」
タイジュの孫であるラティオとガイは年が近い。だから、孫を見ているかのような気持ちなのだろう。その成長を微笑ましく思う節もあるようだ。
「困った母子じゃのう」
サーシャとて、ガイの母親であるマリーとは長い付き合いだ。事件現場では、遺体はリビエラと悪党らしき男女のものしか見つからなかった。だから、20年前に行方不明となったマリーとガイをずっと探し回っていたのだ。そうしているうちに、いたずらに月日は流れていった。大切な友とその息子はどこへいったのか。ずっと狐につままれたような気持ちでいたが、5年前についにマリーと再会した。あの時の衝撃をサーシャはいまだに忘れられないでいる。
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