第49話 動乱
ガイは、リルを一緒に連れ出すことができなかったという後悔の念に駆られていた。スノーヴァ兵士たちに捕まえられてしまったリルを遠めに見ながら、あの時、一緒に戦っていれば……と何度も思った。しかし、過去の出来事を悔やんでも仕方がない。こうなったら、一刻でも早くリルを救い出さなくてはならない。そうでなければ、リルはレイズに殺されてしまう。
「待っていろよ……!」
今のティザーナ王国はガーウィン王子にとっては、針のむしろだ。とにかくフローディアで助けを求めるため、ガイはひたすら馬を走らせていた。レグール砂漠の時には追手は来なかったが、街が近づくにつれて、ちらほらと警備兵がうろつき始めた。
「やっぱりか」
レグールのアランのところに寄ろうかと思ったが、これでは入れそうにない。砂漠で出会った商人からどさくさに紛れてフードがついたローブを買って、顔がわからないように変装したものの不安がよぎる。リルがうまく撒いてはくれたが、あれだけ騒ぎになれば、国境も厳戒態勢に違いない。ごちゃごちゃと考えているうちに心配していた国境が近づいてきた。近づくにつれて、爆破音が聞こえてくる。
「なんだ……?」
火の海となっている国境で、青地に2つの頭を持つ龍の絵が描かれている布切れが風でなびいているのが遠めに見えた。あれはフローアンの旗だ。
「こっちです! 兄貴!」
どこから入ろうかと頭を悩ませていた時、渦中からラティオが新品の鎧を着て、黒い馬に乗ってガイを目掛けて一目散に駆け込んできた。
「ラティオ! どういうことだ?」
どうしてこんなことになっているのだろう。聞きたいことは山ほどある。
「俺も話したいことはたくさんあるんですけど、サーシャ様がじいちゃんの家で首を長くしておられますから、先に行きますね。嘆きの洞窟から回り込みます」
「わかった」
激しい戦いになっている国境の要塞が気にはなるが、まずはサーシャのところへ行かねばならない。ガイは、ラティオとともに嘆きの洞窟がある北へと急いだのだった。
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