第45話 温もり
ちらりと隣を見ると、リルが自分の腕の中で無防備に眠っている。あれだけ警戒していたリルが自分を受け入れてくれたことがいまだに信じられなかったが、この腕の中の温もりは確かに本物だった。寒い朝でも、とても暖かい。
「かわいいなあ……」
夜明けになり、目が覚めたガイは、すやすやと寝ているリルの頭をそっと撫でた。いくら強い剣客で、暗殺者として訓練を受けたといっても、やっぱり人間らしい感情を持った女の子だ。ようやく自分の気持ちを打ち明けて、楽になったのか安らかな寝顔をしていた。早くこんな顔をさせてあげたかった。あんなにずっと一緒にいたのに、自分のことで頭がいっぱいで、気づいてあげられなかったのが悔やまれる。そんなことを考えながら、じっと眺めているとリルが目を覚ました。
「おはよう」
まだ寝ぼけているリルに優しく話しかけると、
「お、おはよう」
リルが顔を真っ赤にして飛び起きた。
「よく寝られたか?」
布団で慌てて隠しているが、豊かな乳房が少し見えている。この微妙に見えるか見えないかくらいのところにまたそそられる。思わず押し倒したくなる衝動をガイは必死に抑えていた。
「ま、まあね……」
ぷいとリルがそっぽを向く。リルがガイと視線を合わせないようにするときは照れている時だとこの旅で学んだ。だから、
「さては……照れているな?」
今からいよいよ全てが動き出すが、その前にかわいいリルを堪能しておきたい。朝からガイはリルにだきついて、でれでれしていた。
「もう。置いて行くよ」
ぶつぶつ言いながらも、リルはなんだか嬉しそうだった。
「おっと。それは困る」
うまくいくことを祈りながら、2人は夜明け前のほのかに明るい外へ出た。
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