第38話 恋

「すごい。船ってこんな感じなんだ」

 船の上から見える大海原に感動し、リルは無邪気にはしゃいでいた。

「どうだ? 初めての船の乗り心地は?」

 その様子をガイがにこにこと嬉しそうに眺める。いつもののどかで平和な光景だ。

「う~ん……思ったほどは揺れないかな……」

 船というのは、波で揺られながら進んでいくから酔うことがあるのだとリュクスから以前、聞いたことがある。しかし、今日の波は穏やかなのか全然揺れない。

「まだトゥエンタからあまり離れていないからじゃないか?」

 確かにまだ振り返るとトゥエンタの街が見える。ガイの意見も一理あるのかもしれない。

「そうなのかな……」

 とりとめのない話をしていると、だんだん波が荒くなってきた。

「わ!」

 揺れにびっくりして、思わずガイの引き締まった腕にぴたりとくっついてしまった。

「リル……?」

 ガイが目をぱちくりさせながら、リルの方を見る。

「ご、ごめん!」

 リルは慌てて離れようとしたが、

「そのままでいいよ」

 ガイはどことなく嬉しそうだった。

「もう……」

 そんな嬉しそうなガイを見るのが嬉しい。この人に恋をしてしまった。そう自覚せずにはいられなかった。

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