第38話 恋
「すごい。船ってこんな感じなんだ」
船の上から見える大海原に感動し、リルは無邪気にはしゃいでいた。
「どうだ? 初めての船の乗り心地は?」
その様子をガイがにこにこと嬉しそうに眺める。いつもののどかで平和な光景だ。
「う~ん……思ったほどは揺れないかな……」
船というのは、波で揺られながら進んでいくから酔うことがあるのだとリュクスから以前、聞いたことがある。しかし、今日の波は穏やかなのか全然揺れない。
「まだトゥエンタからあまり離れていないからじゃないか?」
確かにまだ振り返るとトゥエンタの街が見える。ガイの意見も一理あるのかもしれない。
「そうなのかな……」
とりとめのない話をしていると、だんだん波が荒くなってきた。
「わ!」
揺れにびっくりして、思わずガイの引き締まった腕にぴたりとくっついてしまった。
「リル……?」
ガイが目をぱちくりさせながら、リルの方を見る。
「ご、ごめん!」
リルは慌てて離れようとしたが、
「そのままでいいよ」
ガイはどことなく嬉しそうだった。
「もう……」
そんな嬉しそうなガイを見るのが嬉しい。この人に恋をしてしまった。そう自覚せずにはいられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます