第37話 ご縁

 昼頃までイルマの隠れ家で休ませてもらい、外に出た。さきほどあれだけの騒ぎがあったにもかかわらず、外はすっかり元通りになり、市場から威勢のいい掛け声が聞こえるようになっていた。

「ありがとうございました」

 よりにもよって、あの嫌味なイルマに助けられるとは……人生何があるのかわからないものだ。

「何かをつかんだ顔をしているな」

 見送りに出てきたイルマがにやりと笑った。

「ああ。おかげさまで」

 ガーウィン・メナードとしての使命をガイはこの街で悟った。またいつかこの男とは会うことになるだろう。その時はともに戦い、レイズ政権を倒してみせる。

「頼んだぞ」

 イルマがちらりとミカミと話しているリルを見る。

「おう。任せとけ」

 何があろうとも守り抜いてみせる。その気持ちはもう揺らがない。

「気をつけてね」

 話が終わったのかミカミが駆け寄ってきた。港に向かう2人に大きく手を振る。

「はい!」

 仲睦まじい2人が小さくなって人混みに消えていくまで、イルマとミカミはそこに立っていた。

「イルマさん、なんだか吹っ切れた顔をしているね」

 ミカミがイルマの顔を覗き込む。色々と聞きたいこともあるだろうに、イルマの気持ちを察して優しく笑ってくれるから、一緒にいて居心地がいい。

「そうかもな」

 ガイは、リルのそばにいるには頼りないと思っていたが、さっき会った時には意志の強さを感じられる目をしていた。人一倍警戒心の強いリルもまんざらではなさそうだったし、案外お似合いかもしれない。何にせよ教え子が幸せになってくれることを今日もイルマは祈るのみだ。

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