第36話 守りたいもの

「あれ……? ここは?」

 目を覚ましたところはどこかの家だった。

「よかった……!」

 隣にはリルがいて、嬉しそうにガイに抱きついてきた。やっぱりこの笑顔は嘘ではない。ガイはぎゅっとリルを抱きしめた。

「それはこっちのセリフだ」

 イルマに現実を突きつけられて、しょげていたガイをリルが立ち上がらせてくれたのだ。これからもずっとそばにいてくれないと困る。絶対にリルを失うわけにはいかない。その想いが少しでもリルに伝わったなら、本望だ。自分のけがなんてどうってことない。

「え?」

 じっとリルがガイを見つめる。

「リルに何かあったらどうしようかと思ったぞ」

 守ってあげられて本当によかった。心からそう思う。

「もう。お人好しなんだから」

 リルは泣きながら、いつものようにぶつくさと小言を言う。

「治らないよ。こればかりは」

 俺は俺の道を行く。どんなに残酷なことでも目を背けたりなんかしない。向き合って、ちゃんと乗り越えていく。かけがえのない大切な存在の笑顔を守るために。それがガイ・オーウェンではなく、ガーウィン・メナードとしての使命だ。

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