第25話 カップル?

 閑散とした中心を抜けて南側に行くと今度はいくつかの豪邸が立ち並ぶ通りに着いた。ダータンの家があった北側は浮浪者だらけだったものだから、違う街にいるように感じた。

「ここだ」

 豪邸の中でもひときわ大きな白い壁の家の前でガイが止まる。そして、

「ただいま戻りました」

 元気よく言いながら、玄関のベルを鳴らした。すると、

「おお。よくぞいらっしゃいました。私はアラン・フォスターです」

 中からばたばたととがった面長の顔をした白衣の男が出てきた。くせのある髪を後ろで一つに無造作に束ね、低くて野太い声でリルたちを歓迎する。タイジュの旧友というわりには若ぶりだ。

「私は、ジュエル・フォスターです。よろしくお願いします」

 その奥から上品な金髪の女性が出てきた。青い瞳はどことなくうつろである。全体的に線が細く、風で吹き飛ばされてしまいそうだった。

「はい……こちらこそ……」

 初対面の人と話すのは苦手だ。耐え切れなくなって、ガイの後ろに引っ込んでしまった。

「まさに美男美女ね。お似合いのカップルだわ」

 ジュエルは、うっとりとガイとリルに見とれている。

「カップル……?」

 リルは思わず聞き返してしまったが、ガイは何も言い返さない。まんざらでもなさそうだ。これからどこかで殺されるというのに、本当にのんきで呆れてしまう。

「さあ。支度をしましょう」

 フォスター夫妻もリルの呟きにはお構いなしだ。アランはガイの手を、ジュエルは、リルの手を取ると、奥へ引っ張っていった。

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