第21話 お使い
ラティオの家に戻ると、タイジュが嬉々として喜んだ。
「助かったぞ。ちょっと待っていてくれ」
タイジュはそう言うと、奥の部屋にものすごい速さで引っ込んでしまった。見た目のわりに素早いようだ。待つこと5分。
「できたぞい‼」
また風のような速さで戻ってきた。薬は、50個くらいの小さな瓶に分けられ、厚みのある皮の鞄の中に収められていた。
「……ということで、またまた頼みがあるんですけど……」
ラティオがきらきらと瞳を輝かせる。
「頼み?」
「これをレグールの医師であるアラン・フォスターに渡してほしいんです」
「俺が渡すのか?」
てっきり薬の材料を取りに行くまでが頼まれごとだと思っていた。
「うむ。正確にはガイとリルにお願いしたい。内密に渡してもらえんじゃろうか?」
タイジュの目は真剣そのものだ。これは断るわけにはいかなそうだ。
「内密に?」
ガイは疑問に思い、尋ね返した。すると、
「フォスター医師によると、フローアンの医術じゃないとレグールで猛威を振るう流行り病を治せないらしいのです。応援の医師が何人もレグール市内に入ろうとしましたが、みんな途中で何者かに襲われています」
ラティオが暗い表情で深いため息をついた。
「故意に近づけないようにしているってことか」
「はい。どうやらレイズ国王とレグール市長の折り合いが悪くて人や物の行き来が止められているようなんです……普通に入れば、レグール市内には入れそうにありません。そこで……」
「俺たちに頼みたいってことだな」
人の命がかかっている。できる限りのことは協力しようとガイは思った。
「その通りです。ティザーナ王国の城で働くリルさんが一緒なら、きっと彼らの対応も変わるはずです」
みんなの視線がリルに集まる。リルは何やら考え込んでいるようだった。話を聞いているのかいないのか……それすらも怪しいくらい何かに集中していた。
「……いいだろ?リル」
どうせレグールはここから一番近い街なのだ。異論はないだろう。そうはいっても多少の反論はあるかもしれない……と思って構えていたが、
「いいよ。どうせ止めても聞かないでしょ?」
リルの返事は拍子抜けするくらいあっさりしたものだった。
「ありがとう」
一度言い出したら頑として聞かない。そんなガイの性格をこの短時間でリルは見抜いたようだった。
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