第12話 恋バナ
ラティオを引っ張ってきたのは、子どもの頃、二人で秘密基地と言って、遊んでいた大きな楠の木の前だった。村の北側にある教会のさらに奥にあり、周りには楠の木以外、何もない。実は、このあたり一帯は村長の敷地である。あまりにも広大なので、だれもその境目はよくわかっていないが、北側はかすかに見える一本道の奥にある墓地から南側は教会まで、東側はこの楠の木まで、西側はラティオの祖父である村長とラティオが住む家までということになっているらしい。
「なんですか?」
ここに連れてこられるということは、秘密の話をする時……と相場が決まっている。ラティオは首をかしげた。
「実はだな……」
ガイは、ここまでの経緯をラティオに語った。村長の跡継ぎにあたる彼だが、政治的な話はまるで興味を示さない。だから、何を語ろうとも、
「なんだ。恋人じゃないんですね」
必然的にガイとリルの関係に対するコメントにしかならない。
「そうだ」
予想通りだ。ガイも別に驚かない。しかし、
「でも……兄貴は好きなんでしょ?」
という言葉には驚いた。心臓がどくんと大きな音を立てる。
「……わかるか?」
もちろん、否定するつもりはない。ラティオは、色恋沙汰には聡いのだ。
「一目瞭然ですよ。なんなら、距離を縮めるきっかけ作りの仕方、教えましょうか?」
顔がほてってくるのを感じてうろたえていると、ラティオがにやにやと尋ねてきた。
「さすが。モテる男は違うなあ。それで?」
きっと有用な情報が得られるに違いない。ガイは、身を乗り出した。
「それでですね……」
ラティオがしたり顔で、こそこそと耳元でささやいてきた。
「なるほど。じゃあ、村長の家に案内してもらえるか?」
やはり聞いてみてよかった。納得の答えが返ってきて、ガイはぽんと手を叩いた。
「了解です」
本当に嬉しそうなラティオにガイは、なんだか心救われたのだった。
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