第8話 束の間
「ここを歩いているってことは、任務前かしら?」
城の東側にあるレイズの部屋を出て、白黒の格子状の柄が描かれている長い廊下を歩いていると、落ち着いた女の声がした。振り返ると、
「リュクス」
ティザーナ王国軍・スノーヴァ支部長のリュクスがいた。ブロンドの少しくせのある髪が今日もふわふわと波打っている。男でも重いであろう銀色の鎧をなんなく着こなし、背中ではティザーナ王国の王国軍の証である翼を持つ金色のライオンが縫い込まれたえんじのマントをなびかせていた。
「少しだけ私の剣術の稽古に付き合いなさい」
お互いにティザーニアで生まれ育ち、同じ師匠であるイルマ・ファナックという男に習ってきた。そのため、リルとリュクスは剣を持てば、今でもライバルだ。リュクスがスノーヴァ支部に行ってからは手合わせする機会がなくなっていたから、その誘いはとても嬉しい。しかし、
「支部長には、お相手はたくさんいるでしょ?」
リュクスはティザーナ王国きっての大貴族の才媛だ。正式に王国軍の一員として活躍する彼女の相手が身分の低いリルでいいのだろうかといつも尻込みしてしまう。ただ、リュクスは、
「あなたに勝たないと意味がないの」
剣術の腕に関しては、身分は関係ないという姿勢を崩さない。
「じゃあ、移動しようか」
いつも試合をしている裏庭に。
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