第2章 6話

火薬の臭いが鼻の奥にまで入ってくる。

生暖かい感覚が、服越しに感じられこそばゆい。


ここは、戦場。

司令塔の窓ガラス越しでもその威圧感は感じられる。このすぐ近くで、戦争はおこっているんだ。


一人一人、考えることは違うだろう。

不安、焦り、興味、好意。

私は、少なくとも戦争を愛する立場には居らず、泣きわめくようなキャラではないので、

とりあえず、意思だけはある。と、思う。


「... と、こういう流れだ。いいね?」


最終確認を終え、防具、武器も整った。


一人一人の考えは違っても、

目指す道は同じ、″勝利″だ。

どのような顔をしていても、はたまた顔を伺うことが出来なくても、我々には同じ目的があるのだ



「これが終わったら、珈琲奢ってね。... ノルタ」

「うっぇえ!?僕!?」

「そうだぞ、ノル!私にはパンケーキだからね」

「あはは、俺には本でいいよ。」

「なんでだよぅ... 絶対断るぞ!?今回は!」

「それならオレ、怪我しちゃった時に、ノルタ君だけ、いたーくしちゃおうかナ」

「ひどいよ!シャゲリタン!」

「それ不平等ですよー?先輩」


その場にしばしの平穏が訪れる。


しかし、ここで立ち止まっている訳にも行かない


荷物、食料、弾丸がつまったリュックをからい、愛用のライフル、拳銃を身につける。


「ロイ、まだ緊張してるの?」

「... そんなわけないよ」嘘だ。手が微かに震えているのが見てとれる。

「ほら、あげる」

「なに?これ... 銀の弾丸?」

「これならロイに魔女や吸血鬼が来ても安心ね」

「... って、レプリカじゃんか。でもありがとう、勇気出てきた」

口角をあげ、笑う彼に、もう不安はないようだ。


「では、行ってきます」

ユージラ、シャゲリタンを後方に残し、私達四人は外に出る。




さあ、この四日間を、


絶望と希望で溢れた四日間を、

生き抜いてやろうじゃないか。




己の手にもつ弾丸に希望を誓い、


私は軽く接吻をした。

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