弾丸に接吻を

第2章 1話

「くっ... 」

汗が頬をつたる。

視線をおろすと、息が荒くなり、呼吸をするのも困難と見える青年の姿があった。

虚ろな目をこちらに向け、必死に何かを訴えている。しかし、それに心を動かす訳でなく、私は、右手に銃を構えた。


「ねぇ、ロイ... もう、終わりにしよう?」


拳銃を、脳幹に向ける。

青年は何かを悟ったのか、静かに目をつむった。

私は、引き金を引いた。



空弾。


「残念、私の勝ちね。」


「... まいり、ました。」

息を整えつつ、ロイは体をゆっくりと起こした。

少しやり過ぎたか、とも思ったが、汗を拭き、水分を得た彼は、大丈夫そうだ。

「やっぱり、ロイの問題は体力ね。もう少し食事とったら?」

「″シャゲリタン″から、十分すぎるほど食わされてるんだけどな」

「栄養バランスが悪いんじゃない?」

「そうだね、少し野菜が足りないのかも。僕には野菜、″ノルタ″にはカルシウムを要求しておくよ」

「そうね、それがぴったり。」

場に会わない会話を交わし、クスクスと笑い合う


ここは、陸軍強化兵が使用する、訓練場。

私達は、ある指令を受け、そのためにここで訓練を行っていた。


総統から私達への、戦線のお誘いだ。

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