第一章 7話
硝子越しに見える朝日が、私達を包んでいる。
普段でも見られない光景であり、馬車に軍人が座っているようすを亜米利谷にでも見られたら馬鹿にされるほかないだろう。
時々揺れる車体は、低血圧の私の体力を少しずつ奪っていった。
「あ、見てあそこ!熊がいるよ!」
「甘い匂いにつられて、やってきたのかな?」
そんな私のことはお構いなしに、二人は仲良く会話をしている。お願いだから、静かにしていてくれ...
馬の足がスペア国の敷地内に入るや否や、合奏団のラッパの音が響き渡り、華やかな景気に身を包まれた。
何より、舞う花びらが美しい。
少し街から離れた場所で、降ろしてもらうと、馬車はどこかへ行ってしまった。今だけは、亜米利谷の技術を羨む。
「ボル、大丈夫?」
普段から見慣れてる光景のはずだが、セザンヌからその言葉を掛けられるということは、今の私は相当ヤバいのだろう。
「早朝の馬車に乗るのは、誰だって嫌でしょ... 」
スペア国の朝は早い。
娯楽を嫌う国王は、国民の生活リズムを一変し、朝の国と呼ばれるほどにしてしまったのだ。
夜の仕事なら容易いものだったが、朝というのは専門外だ。ただ、セザンヌとユージラに頼る訳にもいかない。
貸しでも作ったら、どうなることやら... 。
「ほら、朝食にしましょう?」スカートをヒラリと浮かせ、ユージラは軍靴を鳴らしながら歩き始める。
街の人々は普通ならば軍隊に対し会釈などをする
しかし、私達を見ても、会釈をされることなどほとんどない。
軍服をまとった少女など、ただの仮装した幼女にしか見えないのだ。
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