第11話『旧支配者』

横綱万寺、メキシコ出身。

貧しいスラムで育った彼を拾い、まっすぐ育てたのは肉塊親方であった。慣れない環境、合わない食事、厳しすぎる稽古。「いつか殺してやるよ」と笑いながら軽口をたたきあう、肉親以上の肉塊親方が死んだ。


横綱若銀河、東京都出身。

大横綱の父を追い自らも横綱となったがいつも巨大な背中を追い続けていた。初めて本割で父親と立ち合い、ついに自らに足りないものをつかんだばかりだった。


元関脇八極弾、出身地不明。プロレスラー。

拳法をベースにした独特の打撃相撲でKOの山を築き、甘いマスクも相まって次世代の横綱を嘱望されていたが、八百長を強要した某部屋の大関を親方共々ぶちのめし再起不能にしたことをきっかけに角界を追放される。


「俺を土俵から降ろしたらどうなるかわかるか?爆発だ!ヒャハハハハ!!」


ボグッ。ガキッ。

両横綱を思うままに殴りつける八極弾。自らの暴力衝動を棚に上げた、への身勝手な復讐心が露わになった。


「お前らは殴りがいのあるサンドバックだぜ!!ヒャハハハハハ!! 」


ドスン、ドズン、ズムン。

肉が肉を打つ音が響く。


「横綱ァ!本当の相撲を見せてくれよ!!」


拳、肘、蹴、膝、あらゆる打撃が横綱を打つが両横綱は耐える!!


「こうして放送時間が終わるまで八百長(オスモウ)してるんだな!!」


「ヒャーーハッハッ、アガッ!!!」


万寺の渾身の張り手が八極弾を捕らえる。


「うわわわわわわ!!??」


そして若銀河の電車道。一気呵成の送り出し。


八極弾脱落。




【残り2名(260kg+)】




────────────





しかし、爆発しない。

土俵上に名状しがたい巨大な触手が伸び、這いまわっていたからだ。


触手の持ち主は土俵下の職員キャップにジャンパーの若者。彼はキャップを外し、マゲを露わにして土俵へ上がった。


身長197cm、160kg。

「国家安康党」首領、日本の旧支配者その人である。


嗤った口元から蛸状の触手が蠢く!


「SHHHH!!! ……下郎ども頭が高いぞ!!」


【残り2名+?????】

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