第12話『deus ex machina』

触手の持ち主は土俵下の職員キャップにジャンパーの若者。彼はキャップを外し土俵へ上がった。「国家安康党」首領、日本の旧支配者その人である。


「SHHHH!!! 下郎ども頭が高いぞ!!」


土俵上には現役の両横綱、若銀河と万寺。

二人は顔を見合わせ(俺が先にいくぜ)(応)(あとでやろうな)ウィンクをした万寺が一歩前に出た。若銀河は後ろに下がり腕を組んで《稽古総見》の構え。


万寺が腰を深く落とし……殺意のこもった眼差しを向けた。


Let's Playあそぼうぜ!!」



一方、理事長室。


「まずいですな、まずいですな!?」


起爆装置を解除できず狼狽する炸裂親方を押しのけ大春原ヴァルハラ理事長が爆弾を両手でつかみ揺さぶりをかける。現役時代さながらの合掌ひねりだ。


((喝ッッ!!!))


土俵上、万寺の凄まじい二丁拳銃テッポウを秀頼が受け止める。その表情の判別が難しい相貌が確かに笑い無数の眼球が光る触手を高く掲げた。必殺の間合い!


その時、理事長室から激しい雷光が轟いた。


ZGGGGGGTOOOOOOOOM!


起爆!?否!

その稲光の主こそ、大春原ヴァルハラ理事長、元横綱由比輝ユピテル雷電為衛門デウスエクスマキナの再来として雷神の名を与えられた究極の横綱だ。


その"雷神"が理事長室の窓を突き破ってふわりと土俵上へ降臨した。


(())


「SHHHHH!!!」


本性を現し無数の白濁眼球を持つ秀頼と白熱した雷瞳の由比輝が土俵上で睨み合う。一条、二条……八条の稲妻が土俵を包みサンダードームを形成した。


((起爆装置は余が解除した……土俵を降りよ……!!))


「YyyyOoODDDooOOo!!」


両横綱退避、もはや土俵下から見守るしかない!!




時間は17時59分……18!!


ピッ


ピッ


ピッ


ポーン。


「18時になりました。NHKニュースです。」


「おい!なんだよ!相撲をみせろよ!!」


「大相撲混沌場所千秋楽はロイヤルランブル制を導入。会場は熱気に包まれ……ぷすーん……」


「あれ、停電か?」



同時刻福井力士力発電所オペレーションルーム。


「全電力が国技館に吸い上げられている!! 発熱がやばい!!早く水入りを!!」


同時刻中部国際空港に接近していた航空機のフライトレコーダー。


「おい、何も見えない!着陸が!!あああっ!!!」


同時刻日本上空。NHK放送衛星「DOMO」乗務員の通話記録。


「おい!日本が真っ暗だ!停電か?おい! 聞こえるか!?」

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