そっと側にいて…

 光は私たちの住んでいる宇宙空間とは別の「妄想空間」を伝わるということにしましたが、この考え方に抵抗のある人も多くいらっしゃると思います。

 まあ、気持ちは分かります。しかしこうは考えられないでしょうか。

 ファラデーが「」というものを考え出しました。それ以後、磁力が伝わるのは「磁場」、光をはじめとする電磁波が伝わるのは「電磁場」、重力が伝わるのは「重力場」としてきました。これらの磁力や電磁波や重力は出発点と到着点は目で見てわかるのに、途中の経路は全く目に見えません。それぞれが形ある物体になんらかの働きかけをしているのに、途中の姿は全く分かりません。

 今ここにある鉄球を動かそうと思ったら、手で押したりして目に見える形で何らかの動作をしなければならないのに、磁力も重力もまるで魔法のように軽々と鉄球を動かしてしまいます。その、軽々と動かしてしまう力が伝わるのが「場」と呼ばれている得体のしれないモノです。時間や空間のひずみが重力場であると言われていますがある意味、私の考えている「妄想空間」よりもよっぽど怪しげです。

 前にも言いましたが、宇宙空間には「エーテル」という物が充満していて、エーテルが光を伝えているのだと一時は信じていられました。しかし「マイケルソン・モーリーの実験」によってその存在が怪しいんじゃないかと言われ始め、今現在ではそんな物は無いとまで言われています。

 エーテルの代わりにファラデーが「場」というものを考えだし、光はそこを伝わっているのだとされています。ということは「エーテル」が「場」に変わっただけじゃないかと思われて仕方ありません。

 だってエーテルがあると言われていた時も、進行方向には物が縮むなんてことがまじめに言われていたわけだから、今とそんなに変わらないんですよ。そのエーテルとか場とかの代わりに第2の空間を持ち出してもバチは当たらないと思うんですよね。

 そしてもう一つあります。

 皆さんは年に一度の胸部エックス線検査、俗に言うレントゲン検査ですが受けていますか?え?受けてない?ぜひ受けることをお勧めします。まあそれはそれとして、エックス線検査をするとどうして体の中が透けて見えるのかご存じですか?

 体は原子が集まってできていますが、その原子と原子の間は隙間があって、エックス線は目に見える可視光線よりも波長が短いから、その隙間を通り抜けることが出来ます。しかし、骨は原子の隙間が極端に狭いのでエックス線ですらなかなかうまく通り抜けられない。だからエックス線写真は皮膚とか内臓の部分はぼんやりと、骨の部分はくっきりと写る…とまあ、大体こんな具合に説明されています。

 というような説明の通りだとすると、波長の短い電磁波は、波長の長い電磁波よりも物体を通りやすいということになりますよね。

 既にお話ししましたが、電磁波は波長の短い順に


  ガンマ線 エックス線 紫外線 可視光線 赤外線 電波


 ってなっていて、「電波」を波長の短い順に並べると、


  マイクロ波 超短波 短波 中波 長波 超長波


 となるのでした。

 と、ここで実験です。スーツケース…某通販サイトで8千円程度で買えるスーツケースを使います。

 携帯用の電池式カンテラの電気を点し、用意したスーツケースの中に入れ、ジッパーを締めて、部屋の電気を消して真っ暗闇にします。この時にスーツケースを見てみます。カンテラの明かりはどこからも漏れていません。ジッパー部分から漏れているかと確認しましたが、どこからも明かりは漏れていませんでした。

 次に、このカンテラを一旦取り出して、次に用意するのは携帯ラジオです。AMラジオにして一番聞きやすいチャンネルの周波数に合わせます。ボリュームを最大にして先ほどのカンテラと同じようにスーツケースに入れます。さて、この携帯ラジオの音は聞こえるでしょうか。答えは「聞こえる」です。AMラジオの受信は方向が大事なので、スーツケースの方向をあちらこちらに変えたところ、若干の変化はありましたが、ちゃんと聞こえました。

 さて、この実験から何が言えるでしょうか。

 スーツケースは「光は通さないけど、AMラジオの電波は通す」ですね。

 光というのは可視光線で、AMラジオの電波は中波です。先ほど言ったように可視光線の方が中波よりも波長は短いです。

 エックス線検査がなぜできるのかの説明では、波長の短い電磁波の方が物体を通りやすかったから、というのが理由だったはずですが、このスーツケースを使った実験では、波長の長い電磁波の方が物体を通りやすいという結果が出てしまいました。

 「いや、それは送信出力が大きいから電波でもある程度は通り抜けるんだよ」という声が聞こえそうです。ウン、それならそれでも良いんです。ただ、何故か誰もそんなことは教えてはくれません。波長が長くても電磁波のエネルギー量が多ければ、物体を通り抜けられることをなぜ誰も教えてくれないのでしょうか。

 それにです、電波がエックス線のようにスーツケースを通り抜けるのであれば、危険なエックス線など使わなくても超強力な電波を使えば、年に一度の胸部の検査もできるでしょう。まあ、超強力な電波が安全であるかどうかは分かりませんけどね。

 さて、ここまでで分かることがありますよね。電磁波が物体を通り抜けられるとか通り抜けられないというのは、波長とは関係ないということです。電磁波のエネルギーが強ければ波長が多少長くても物体を通り抜けられるんです。

 あちらこちらでエックス線の波長が短いから体の中の骨が見えるだとか言われていますが、その説明はどうも怪しいんじゃないかと思えてしかたありません。だからこそ、妄想空間という考え方が出てくるのです。

 何度も言いますが、電磁波は我々の住む空間ではなくて、妄想空間を伝わっていると考えるならば小難しい理屈なんて考え出さなくても、簡単に説明ができるはずです。「場」という物が伸び縮みするなんて考えなくてもいいはずなんです。ですので、ここでは私の妄想空間というものにお付き合いくださいますようお願いいたします。

 じゃあ妄想空間ってどんな空間なん?って思いますよね。なのでここからは妄想空間について妄想を繰り広げていきます。

 まず、光…電磁波全般ですが、光と磁力は妄想空間を伝わる。なぜなら、そういう設定にしたからですね。

 次に、この宇宙空間と寄り添っていること。もし妄想空間が宇宙空間から遠く離れた場所にあるとしたら、宇宙空間の光は遠く離れた妄想空間まで一旦転送されなければならないから大変です。だったら、すぐ近くにあったほうが便利ですよね。ところで、寄り添うというのはどういうことか。

 今、目の前に2次元の世界があるとします。紙のような世界だと思ってください。ただし、厚みのない紙です。その厚みのない紙の中で平面な人間があっち行ったりこっち行ったりしている世界です。2次元の中の人間は高さというものが分からないので3次元の人間である私達の事は分かりません。私たちのことを見ることもできないでしょう。仮に私たちがその世界を横切ることができれば「あ、なんかが目の前に現れた!」くらいには分るでしょうが全体像までは分からないでしょう。

 では、この目の前にある2次元の世界と私達の3次元の世界が完全に分かれているかというとそうではありません。

 2次元の世界である紙の中の人間は、3次元の世界に触れる事もできないし、見ることもできませんが、二つの世界は間違いなく繋がった空間にあります。

 まだ分かりにくければこう考えてみてください。ここにカステラがあります。これを包丁で半分に切ります。包丁で切りましたから、切ったところに断面が現れました。まあ、当たり前ですね。じゃあ、この断面の厚さは何ミリでしょうか。切り分けたカステラの厚みではなくて、切ったところに現れた断面の厚みです。1ミリ?仮に1ミリだとすると、断面から1ミリの厚さで切りとった薄いカステラ全体が断面と言えます。

 でもそんなことはないですよね。断面は断面であって、厚さがあるものではありません。切り分けて現れた表面だけが断面だということは分かっていただけたと思います。

 じゃあ、厚さがないから断面なんて存在しないかと言うとそうではありませんね。厚さがなくても今まさに目の前に断面は存在しています。

 この厚みのない断面をこの宇宙空間、カステラを妄想空間だと考えてみましょう。断面の住人にはカステラ全体のことなんて全く分かりません。しかし、カステラは間違いなく断面のそばにあります。

 同じように妄想空間は間違いなくこの宇宙空間のすぐそばにあり、この宇宙空間に何らかの影響を与えているはずです。妄想空間とはそのような空間だと思ってください。

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