磁力を妄想する

 人間よりもはるかに小さい磁石でも、クリップを引き寄せたり、磁石同士で反発したり、下手をすると人間より大きな力を出しています。

 もっと言うと、磁力は重力よりも力が大きいとされています。意外ですよね。だって、地球はあの月を引っ張っているくらいだから、重力は磁力よりも相当大きいと考えたくなりますよね。

 しかしさっき言ったように、小さい磁石でもクリップを引き寄せます。このクリップに磁石を上から近づけると、磁石は重力を無視して机から飛び上がって磁石にくっついてしまします。これから考えると、磁力の方が重力よりも大きいというのは頷けますよね。

 こんな風に磁石は本当に不思議な力を持っているように見えます。ということで、ここからは磁力のそんな不思議な力の正体を妄想していくことにします。

 ところで、磁力の見えない力は私たちの住む世界のこの空間をどんな風に伝わっているのでしょうか。

 光は「妄想空間」を伝わるということにしましたね。光が妄想空間を伝わるのであれば、光は電磁波の一種ですから、磁力も光と同じように妄想空間を波として伝わっているはずです。なので「磁力も妄想空間を伝わっている」ということにして話を進めます。

 磁力は磁石のN極とS極から出ていると考えられています。で、磁力は波として妄想空間を伝わると考えました。であるならば、磁石のN極から出た磁力の波がS極と繋がっている、もしくは逆にS極から出た磁力の波がN極と繋がっている。どちらでもいいのですが、N極とS極を繋ぐ磁力の波が妄想空間を伝わっていると考えます。

 そう考えると磁力の波は二種類あると言えます。磁力の波自体はN極とS極をつなぐ一つの同じ波であるように見えますが、N極側から見た波とS極側から見た波では違って見えているのではないか、と考えられるということです。それに、もしもN極とS極の波が全く同じであるのならば、N極とS極で分ける必要もありませんからね。

 このN極とS極それぞれから見た波のことを、「妄想N極波」と「妄想S極波」と呼ぶことにします。N波とS波としても良いんですが、地震の波であるP波、S波と紛らわしいので、妄想N極波と妄想S極波という表現で進めます。

 この二つの波は、波の形が反対の波であろうと推測できます。波の形が反対と言うのは、一方の波が上にある時はもう一方は下にあるというように、鏡に映して上下が反対になるような波の形だと考えてください。

 例えば右手と左手で波を作ってみます。右手が上にある時に左手が下にあり、右手が下にある時には左手が上にあるという具合に、ちょうど反対の動きをしていると妄想してみるのです。

 ここで磁力についてもう一回だけおさらいしておきましょう。NとNとかSとSのように同じ極同士だと反発して、NとSという違う極同士だとくっつく、でしたね。

 さて、同じ極同士だと反発して、違う極同士だとくっつくというのはどういうことでしょうか。先にお話したように、ここでは磁力を波として考えることにしました。波として考えるなら、同じ極同士の波だと反発して、違う極の波だとくっつく、ということになります。

 同じ極同士だと同じ形の波ですから、同じ形の波が合わさると、波が2倍の大きさになります。同じ極同士だと波が強くなって、しかも反発してしまう。

 逆に違う極同士の波だとどうなるでしょうか。違う極同士の波は反対の波だと言いました。波のパターンが反対になっている波をぎゃくそうの波といいます。逆位相の波が合わさると、波同士が打ち消しあって、波自体が無くなってしまいます。

 例えば、まちなかの騒音を消そうと思ったら、街中の騒音と反対の波を街中で発生させれば理論上は街中の騒音は消えてしまいます。

 最近では、ノイズキャンセリング機能の付いたイヤホンも売られていますから、ご存じの方も多いと思います。ノイズキャンセリング機能を作動させても騒音が全然聞こえなくなるわけではありませんが、騒音はかなり小さくなります。騒音が小さくなる仕組みは逆位相の波を上手いこと使った結果です。

 こんな風に、違う極同士の波が近づくと、お互いに逆位相の波ですから、妄想N極波と妄想S極波、それぞれの波が消えてしまいます。で、波が消えてしまった結果、磁石はくっつくことになる。

 これは何を意味しているのでしょうか。同じ極同士だと波が強くなり反発し離れてしまう。違う極だと波が消えてしまいくっつく。波が強くなると反発、波が消えると反発しない……。この波って、ひょっとすると、お互いに離れようとする力なのではないか、と考えられなくはないですか?

 つまり、N極もS極もそれぞれ離れようとする力の波を出しているのではないかと妄想してみるのです。

 この、お互いに離れようとする力のことをせきりょくといいます。お互いに引っ張り合う「引力」の反対と思えばいいです。分かりやすい言葉で言いかえると反発力ですね。

 お互いに離れようとする力なんてすぐには受け入れられないかもしれませんが、お互いにくっつこうとする「引力」も得体の知れない力ですから、考えようによっては引力も斥力も似たようなモンです。

 話を戻します。妄想N極波も妄想S極波も同じ斥力の波でありながら、それぞれがお互いに逆位相となるような波です。お互いに逆位相であるために、合わさってしまうとお互いの波が打ち消しあって、波そのものが消え、斥力も無くなってしまい、結果的にくっついてしまう。

 同じ極同士なら全く同じ形の波が合わさることで波自体が強くなり、離れようとする力、つまり斥力も強まりお互いに離れようとする。何となく良さげですですね。

 磁石がもともと斥力を持っていることで、同じ極同士を近づけると全く同じ波同士なので波が強まり反発力が強くなる。反対の極では波同士が打ち消しあい、反発する力が小さくなるためにくっつきやすくなる。

 とまあ、ここまできて思っていることがありますよね。「もともと斥力があるんだったら、磁石じゃなくても何で物質同士でお互い離れないんだよ」って。それは、斥力の波が2種類あるからじゃないかなと思うんです。

 もしも斥力の波がどちらか一種類だけだったら、さっき言われたように、磁石じゃなくてもお互い離れると思うんです。波が強め合うんだから。 

 けど、波が2種類あって、しかも逆位相の波同士であれば強め合うか消えてしまうかすることで、くっつく力と離れようとする力が上手い具合にバランスをとって、付かず離れずの関係を保っているんじゃないかと思うんです。

 ただ、謎は残ります。なぜ斥力の波が消えてしまうとお互いにくっつこうとするのかです。これでは、今まで言われてきた磁石がくっつく理由の、説明のつかない説明と変わりません。

 まあ、その謎は後で触れるとして、磁力に関しての妄想は一旦ここまでにしておきます。

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