信じていいの?光速度不変……

 取りあえずそんな原理、一旦無かったことにしてしまいましょう。そんな原理というのは「光速度不変の原理」のことです。光速度不変の原理なんて無かったものとして考えましょうということです。つまり、ここから私の妄想が始まるわけです。

 まず考えなくてはならないのは、光は一体何を基準にして伝わっているのかということです。光が波と粒のどちらの性質を持っていようが今は関係ありません。音と同じ伝わり方なのなら空間を基準にしますし、野球ボールと一緒ならボールを最後に触った人が基準となります。ここはきっちりと決めてしまいましょう。

 それでは先ず、音と同じ伝わり方をしているとします。つまり、宇宙空間を基準として考えるわけです。一度は「マイケルソン・モーリーの実験」によって否定され捨てられたエーテルの存在を認め、考え直しましょうということです。もちろん実験でではなく妄想でですが。

 秒速10万キロで飛んでいるロケットがあります。操縦士の前にある情報は秒速40万キロで操縦士の目に飛び込んできます。操縦士の後ろにある情報は秒速20万キロで操縦士に伝わります。ここまでは良いですね。

 それでは、今度はロケットの速度を秒速40万キロまで上げてみましょう。光より速く進むことはできないなんてここでは忘れてください。なんてったって妄想ですから。

 秒速40万キロで進むと操縦士には前方の情報が秒速70万キロで伝わってきます。逆に後方の情報は秒速10万キロで遠ざかっていきます。…遠ざかる?

 いやいや、ロケット内の空間はロケットと一緒に移動するんだからロケットの中の光は秒速30万キロで進むだろう、という声が聞こえそうです。百歩譲ってそうだとしましょう。

 では、このロケットがスケートボード型だとします。操縦士がでかいスケートボードの上に乗っかっているのを想像してください。こうなるとロケット内の空間というのは存在しません。ということは、このスケートボードが光の速さを超えて飛ぶ限り、スケートボードの上で起こったことでも、操縦士の後ろで起こったことであれば操縦士には永久に伝わらないということになります。

 変な話になってしまいました。と言うことで光の速さは空間基準であるというのは無しにしましょう。

 さて、今度は野球ポールと同じ伝わり方をしていることにします。つまり、光を出した人基準と言うわけです。

 さっきと同じように秒速10万キロで飛んでいるロケットがあります。このロケットから放たれた光はロケットが基準となりますから、光をロケットの操縦している太郎から見ると前方にも後方にも秒速30万キロで進んでいるように見えますが、ロケットに乗っていない静止している私から見ると、光は前方には秒速40万キロ、後方へは秒速20万キロで進んでいるように見えます。

 仮に、ロケットに乗っていない静止している私が光を出すとすると、静止している私には秒速30万キロですが、秒速10万キロで飛んでいるロケットに乗っている太郎には、私の出す光が太郎の進行方向には秒速20万キロ、後方には秒速40万キロで伝わっているように見えるはずです。ここまでは何の問題も無いように思えますね。

 それでは、今度は静止した私のいる地点から50万キロ離れた場所に太郎の操縦するロケット太郎、30万キロ離れた場所に私の娘花子が操縦するロケット花子があります。ロケット太郎は秒速10万キロで私のいる地点に向かって、ロケット花子は秒速10万キロで私のいる地点とは逆方向に同時に出発することにします。

 とすると、ロケット太郎から私のいる地点に届く光の速さは秒速40万キロ、ロケット花子から私のいる地点に届く光の速さは秒速20万キロになります。

 2台が出発してから1秒後の地点はそれぞれ私のいる地点からはちょうど40万キロの距離になります。ロケット太郎から放たれた光は秒速40万キロで私のいる地点に向かっているので私のいる地点にはちょうど1秒後に届くことになります。ロケット花子から放たれた光は秒速20万キロで私のいる地点に向かっているので私のいる地点にはちょうど2秒後に届くことになります。…?

 同じ距離だけ離れているのに、届く時間が違う?これで良いんですかね? ま、まあ前提として光速度を、光を出した人基準だとしましたから、これはこれで受け入れましょう。

 今度は鏡を使った実験をします。秒速30万キロでやってきた光を鏡に当てると、秒速30万キロで反射するはずです。

 今度は私が秒速10万キロで飛ぶロケットに乗っていることにしましょう。ロケットのはるか前方で静止している花子が私の乗っているロケットに向かって光を放ちます。この光は花子から見ると秒速30万キロです。ロケットに乗っている私には前方から来た光が秒速40万キロだと感じられます。この光を鏡に当てると秒速40万キロで反射して、花子のいる方に向かうはずです。

 さて、前方で見ている花子は、このロケットの中の鏡で反射してきた光の速さを秒速何キロだと感じるでしょうか。さっきも言ったように光は鏡が動いていなければ秒速30万キロで反射します。もしも鏡そのものが光に向かって動くなら、光は鏡の速さの分だけ早くなるはずです。なのでロケットの外にいる花子は、ロケットの鏡で反射した光の速さが秒速40万キロだと感じるでしょう。ロケットに乗っていた私も秒速40万キロだと感じたから問題ない…と思ったら大間違いです。

 ロケットは秒速10万キロで飛んでいます。そのロケットに乗っている私が、光を秒速40万キロで反射したと思っているんです。だとしたら、私が花子の立場で考えると、ロケットの外で静止している花子が感じる光の速さは、私の感じる光の速さにロケットの速さを足した、秒速50万キロになるはずです。

 だけど、実際には外にいる静止した花子は秒速40万キロだと感じています。なぜこのようなことが起こるのでしょう。

 ロケットの中の私基準で考えます。私の方に来る光はすでにロケットの速さの分速くなっています。その光を、ロケットの速さの分速くなっているだけ前に全部反射します。これを花子が見る時は、ロケットから反射してきた光にロケットの速さを足すことになります。つまり、ロケットの速さを2回加えることになります

 静止している花子基準で考えるとどうなるでしょう。花子が出した光がロケットの鏡に反射するのを見ます。この反射する時にロケットの速さが加わります。そしてそのまま花子のところに光が戻ってくることになりますから、ロケットの速さが加わるのは1回だけです。

 このようにロケットの中の私を基準にするか、静止している花子を基準にするかで結果が違ってくるのは当然なんですね。というわけで光を野球のボールと同じように考えるのは無理があるということになりました。

 基準が空間であっても、光を放った物体であっても、どちらか一方だけを基準にはできないと言うことがわかったわけです。

 やはり観測者や、光を発している物の動きに関係なく、光の速さは誰にも常に一定だと認めざるを得ない感じになってきました。

 しかし、前にも触れましたが、光の速さを誰にも常に一定だとすると、納得できないのは時間と空間が伸び縮みすること。まあ、時間は許せます。時間の流れがここより早かったり遅かったりしても、なんとなく納得できる気がするんです。まあ、私の気持ちですけど。でも、空間だけはどうしても許せないです。

 例えば私と太陽…地球と太陽でもいいですけど…ここでは、私と太陽の関係で考えてみます。私は太陽の周りを回っています。つまり静止していないということです。ということは私と太陽の間の空間も相対性理論の通りなら少なからず伸びてるか縮んでるかしているはずです。

 その私と太陽の間に何か静止している物があるとしましょう。だったら、この何かにとって私と太陽の間の空間はどうなっているの?縮んでるの?それとも何も変わっていないの?となるわけです。

 私と太陽だけの問題ではなく、宇宙空間はそういう関係になっているものだらけで、とすると、宇宙空間はあちらこちらが相当伸び縮みしていて、収拾がつかなくなっているんではないかと危惧しているわけですよ。下手すると宇宙崩壊です。

 光速度不変の原理を受け入れるということは、時間と空間が伸び縮みするということを認めることになります。そうなると、この宇宙空間はあちらこちらが伸び縮みしていて、どうしようもなくとっちらかった状態になっちゃってるんじゃないでしょうか。そんなグチャグチャな宇宙はいやだとは思いませんか。

 しかし、光速度不変の原理を受け入れないとすれば、さっき話したみたいなことになり、それはそれであちらこちらが混乱することになりかねません。

 何かいい手はないでしょうか。光速度が不変ならば、宇宙空間と時間が伸び縮みしないと説明ができない。しかし今まで考えてきたように、宇宙空間のどこか一点や、宇宙空間を基準として光速度を考えると、必ず何かしら不具合が起こります。……いっそ、他の空間を伝わっているということにしてみませんか?

 よし、決めました。光は第二の空間「妄想空間」を伝わるということにします。

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