ちょっとだけよ、相対性理論

「おっと、いきなり相対性理論ときたか!」なんて身構えないでください。大丈夫です。私自身が相対論のことをあんまり分かっていないし、ましてや数式なんて出しませんから安心してください。じゃあ、なんで相対論なんか持ちだしたのか。

 光速度不変の原理を一番最初に打ち出したのがこの理論だからです。しかも 相対論って現代物理学の基礎理論なんだそうです。光速度不変の原理を語るのであれば、相対論って一体何なのかっつうのを、ちょっとだけでも知っておくのも必要ですよね。

 さて、相対性理論もしくは相対論と一口に言いますが、1895年に発表された特殊相対性理論と、1912年頃発表された一般相対性理論の二つの理論のことをまとめてこう呼んでいます。

 重力のない「特殊」な状況で、真空中でのエネルギーと物体の動きはどうなるだろうかと書かれたのが特殊相対性理論。で、重力のある「一般」的な環境での、エネルギーと物体の動きについて書かれたのが一般相対性理論。特殊相対性理論の方は中学レベルの数学で十分なので結構簡単らしいんですが、一般相対性理論の方は使われる数式のレベルが一気に上がってしまうので、相当に難しいそうです。

 それにしても「光速度不変の原理は間違っとる」「マイケルソン・モーリーの実験は間違い」「時間の進み方が違うなんてありえない」「双子のパラドックスなんてことあるわけがない」という具合に、「相対性理論は間違っとる」と主張される方のなんと多いことか。インターネットで検索するのに「相対性理論」って打ち込んだだけで「相対性理論 まちがい」なんて勝手に出てくるくらい相対性理論が間違っていると主張しているサイトがワンサカ出てきます。

 なので相対論が間違えていると主張される方を今後「そうろんしゃ」と呼ぶことにします。逆に「相対性理論は完璧な理論であって、間違えているわけがない」と主張される方々もいます。その人達の事は「相対論信者」と呼ぶことにします。で、私は相間論者か、相対論信者のどちらかと言うと、相対論が間違っているか間違っていないか私に分かるわけがないので「どちらでもない」が答えです。

 ここで主にお話しするのは簡単な方、特殊相対論です。何度も繰り返しますが、難しいことは分かりませんので、ローレンツ変換やらローレンツ収縮やらテンソルやら四元速度やらアインシュタイン方程式やらシュヴァルツシルト解なんかを真剣に勉強なさりたい方はここで退場されることをお勧めします。

 さて、いよいよ本題に入りますが、特殊相対性理論には二本の柱、「原理」と呼ばれるものがあります。原理というのは「この世の中で起こる全ての現象が逃れられない決まり事」ってな感じですかね。

 人間が暮らしていく中でいろいろな決まり事がありますよね。法律とか規則とか慣習とか呼ばれているやつです。それを守らないと、世の中が混乱する決まり事です。でもその決まり事って守らないこともできます。警察のご厄介になるとか、世間から爪弾きされる恐れはありますが、それでもその決まり事を守らないという選択肢は人間にはあります。

 しかし、「原理」は守るとか守らないとかではなく、絶対にそうなってしまうという、この世の中に存在する限り絶対に縛られる決まり事なんです。だから「原理」から逃げる事はできません。「オレは重力なんて関係なくどこでも飛んでいけるぜ」なんて、麻○○晃でも土台無理な話なんです。というところで、相対性理論の二つの原理を見ていきましょう。


 ○物理法則はどこでも同じように成り立つ。

 ○光線を発射した物体の運動状態にかかわらず光は決まった速度で進行する。


 一つ目の「物理法則はどこでも同じように成り立つ」。「相対性原理」と呼ばれています。これは非常に大事ですね。「ここでは熱を加えると水の温度が上がるけど、あそこでは水が凍るらしい」なんてことになるとややこしい話になります。やっぱりみ~んな仲良く同じ物理法則って感じでいきたいですね。これには相間論者も相対論信者も異論のないところでしょう。

 あ、相対性原理ってアインシュタインというイメージがありますけど、言い出しっぺはガリレオ・ガリレイです。「静止していても、一定速度で動いていても、物理法則は同じように成り立つ」というもので、例えば、地上でまっすぐ上にジャンプしたら、ジャンプした場所に着地します。一定速度で動いている電車の中でまっすぐ上にジャンプしたら、地上でジャンプした時と同じように、必ずジャンプした場所に着地します。これが相対性原理の一つの例です。

 え~、そして二つ目の「光線を発射した物体の運動状態にかかわらず光は決まった速度で進行する」。これこそがここのテーマ「光速度不変の原理」です。実はこれが特殊相対性理論が攻撃される原因になっています。諸悪の根源と言っても良い…ってそれは言い過ぎですね。一体何がいけないのでしょうか。前にも触れましたが、光速度不変の原理とはどのような原理なのかを改めてみていきましょう。

 ピッチングマシンを使って野球ボールを投げます。ボールの速さの設定を時速150キロにします。時速100キロで走るトラックの荷台でこのピッチングマシンを使ってボールを投げます。トラックの進行方向に向かって投げて、このボールの速さを地上で測ると?そう、時速250キロで測定されるはずです。と、ここでは空気抵抗は考えないでください。逆に後ろ向きに投げると?時速50キロで測定されることになりますね。

 では、光はどうでしょうか。光の速度は秒速30万キロと言われています。時速100キロのトラック…え~と、時速100キロを秒速に直すと秒速28メートルになります。ここで、秒速28メートルのトラックに乗ったところで、光速度の秒速30万キロプラスマイナス0.028キロです。3億円持っている人が28円だけあげたり貰ったりするようなもんです。なのでここは、秒速10万キロのロケットに登場してもらいましょう。

 あ、お断りしておきますが、実際の光速度は秒速299792.458キロなんですが、ちょっとくらい違っても世間的には何の影響もないし、これでは計算しにくいし面倒臭いので、今後も光速度は秒速30万キロで通します。

 というわけで、秒速10万キロで飛んでいるロケットの前方に光を発射しました。これをロケットの外で静止している人が見たら、光の速さは秒速30万キロに見えます。

 これは音も一緒で、パトカーがどんなに速く走り回ってもサイレンの音は秒速340メートルでしか伝わりません。音は空気の振動です。空気は音の振動を秒速340メートルで伝えるという性質があります。振動の伝わる速さが秒速340メートルなら、音源がどんなに速く動いても、空気自体が動かない限り、空気の振動の伝わる速さ以上で伝わることがないのは理解できますよね。

 同じように、光は宇宙空間を秒速30万キロでしか伝わらないのだから、光源がどんな速さで移動しようが光速度は変わりようがないのです。ここまでは良いでしょうか?

 さて、今度はこの光を空飛ぶ円盤に乗って観測してみます。このロケットの遥か前方からロケットに向かって秒速10万キロで飛んで、ロケットから発射された光を観測します。すると光の速度は?秒速40万キロ?

 ブッブー。答えは秒速30万キロでした~。

 ……はぁ?って感じですよね。

 しかもです、ロケットに乗っている人が光の速さを計っても秒速20万キロではなくてやっぱり秒速30万キロです。どういうこと?

 光速度不変の原理は「光線を発射した物体の運動状態にかかわらず光は決まった速度で進行する」となっていて、光源の動きのことには触れていますが、光を見ている人のことは全然書いていません。だったらなぜ?って思いますよね。実は一つ目の相対性原理である「物理法則はどこでも同じように成り立つ」が絡んできています。

 光速度秒速30万キロは物理現象であるから、観測者の運動状態に関わらず、光速度は不変であるのが当たり前、ということになってしまうのです。一見サギに見えますが光源の運動、観測者の運動に拘らず光速度は常に一定に観測される。これが光速度不変の原理の説明です。

 このサギまがいな現象を天才アインシュタインはどの様に説明したのか。小難しい説明は抜きにしてザックリと言うと「時間と空間が伸び縮みするから大丈夫」なのだそうです。

 ……そんなバカな、と言いたいですよね。だからこそ相間論者が世の中にはびこるのです。相間論者ではなくても首をひねりたくなる原理です。そういった意味では私も相間論者かもしれません。

 ま、まあ、一兆歩譲ってその原理が正しいとしましょう。じゃあ、何でそうなるのか?という問いには誰も答えてくれません。「それは最初っからそうなっているのだから説明のしようがない」というような回答を、ヤ○○○○袋とか教○○○○○o などでよく見かけます。誰もわからないのでしょう。

 それにしても光速度は本当に……不変なのでしょうか?

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