第15話 祭りの後始末

「<8-12>本部に対して公正取引委員会より業務改善命令を出しました。内容的には廃棄食品、返品、万引き商品などロイヤリティを課す『ロスチャージ会計』の廃止、同じチェーン店内での過当競争を生み出す『ドミナント戦略』の規制などです。以上です。何か質問があれば答えます」


 安東要総理はあっさりとした口調で言ったが、今までの政府の意向と比べると革新的な発言であった。

 福島の天山原発事故で首都を名古屋に移して、東日本、関東からの撤退を決断した安東要である。

 その政治手法は疾風怒涛、思い切った政策を打つ総理だと評判である。


「安東総理、今回の公正取引委員会より業務改善命令ですが、あなたの親戚の神沢財閥総帥の神沢仁氏への『忖度そんたく』ではないかという話がありますが、如何でしょう?」


 毎朝新聞記者から核心をついた鋭い質問が飛ぶ。

 <8-12>本部の仕込みかもしれないが。


「いや、確かに神沢仁氏は私の親戚ではありますが、今回の業務改善命令は公明正大なものだと、天地神明に誓って宣言することができます。以上です」


 と言うと、そそくさと記者会見を切り上げて引き上げていく。


「総理、総理! ちょっとそれは無いんじゃないですか!」


 記者から追いすがるような怒声が飛ぶが、安東要総理はSP、秘書官に護られつつ、強行突破して総理室に逃げ込んだ。


「あれで良かったんでしょうか? 安東総理」


 野村秘書官が言わずもがなの念押しをしてくる。


「いいんだよ。事実なのだから、誤魔化すしかない。神沢の爺さんは怖いんだよ。業務改善命令を出さなければ、『衛星兵器の<天照アマテラス>で<8-12>本部を蒸発させる』とか言ってきたから、俺は<8-12>本部とその社員を守ったのだから、感謝して欲しいくらいだ」


 神沢仁は古代から日本を守護している秘密結社<天鴉アマガラス>の剣の民の長老でもあり、地球周回軌道に時折、現れる妖星<クルド>という亜空間要塞惑星から放たれる超古代兵器<天照アマテラス>の発射権限を持っている。

 さすがに、国民を守る総理大臣が<8-12>本部を蒸発させる訳にはいかなかった。

 安東要は秘密結社<天鴉アマガラス>の勾玉の民であり、組織の人員をまとめる立場にあった。


「そうですね。神沢翁はそういう人でしたね」


 幼い頃から永年、安東要に仕える執事でもある野村秘書官は、いつものことではあるのだが呆れて言葉が続かなかった。

 彼も<天鴉アマガラス>の勾玉の民である。


「とはいえ、<8-12>本部も調子に乗りすぎた。世の中、やり過ぎては叩かれる。空気を読んで忖度そんたく、いや、配慮してもらわないと困るんだよ」


 安東要は嘆いた。

 名古屋の清明神社に参拝してから後、何だか逞しくなった気がする野村秘書官であった。

 まさか安倍清明や織田信長と共に戦国時代などで一緒に戦ってきたことは彼はまだ知らなかった。












(あとがき)



安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚 坂崎文明

https://www.alphapolis.co.jp/novel/771049446/809038308


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