第16話 健康コンビニ<絆>

「今日も頑張るぞ!」


 絆は今日も元気にコンビニに立つ。

 もう一ヶ月ぐらい前に<8-12>本部からは契約解除を言い渡されて、『健康コンビニ<絆>』という店舗名に変わっている。

 幸い、違約金の3000万は何とか支払い済みで、神沢のお爺さんの神沢財閥の支援で融資を受けて店舗改装ができた。

 <8-12>本部の一夜城店舗があった場所には、今、<道の駅神沢町>産直市場が建設中で父親の春樹が店長に内定している。


「そうだな。神沢のお爺ちゃんへの借金三千万を早く返さないとな」


 店長の春樹が要らぬプレッシャーかける発言をするが、コンビニの売上げは日販100万は超えているし、逆に返済の目処がついているということでもある。

 もうドミナント戦略もロスチャージもないし、<8-12>などのコンビニ店舗が半径数十キロには何故か出店されていなかった。100円ショップに改装されていた。


 SNSフェイスライトグループでの健康志向の『無添加食品を広める会』や『日本母親連合』などに、健康食品、食材などをネット通販で販売していて、そちらも日販100万ぐらいになってきている。

 そちらの方はグエンさんが担当している。

 バイトリーダーはベトナム人女性のチャンさんに交代している。


「あなた、早坂さんが来たわよ」


 副店長の妙子が来客を告げた。


「春樹さん、順調そうですね」


 早坂は相変わらず恰幅かっぷくがよく、まるで大黒様のような見えた。

 コンビニ一家にとっては、今では福の神のようなものである。


「まあ、お陰さまで。早坂さんはSV辞められたと聞きましたが、今はどうしてられるんですか?」


 春樹が訊ねた。


「神沢のお爺さんの所で雇ってもらいました。また、このコンビニの仕入れ関係を担当させて頂きます。以前は迷惑おかけしましたが、よろしくお願い致します」


 早坂は丁寧に頭を下げた。

 神沢財閥の物流、商社部門の会社に再就職したらしい。


「いや、謝ることはないよ。早坂さんが協力してくれたので助かったよ。そうかあ。新しい担当に変わると、神沢のお爺ちゃんから言われてたんですが、早坂さんだとやりやすいよ」


 春樹は嬉しそうだ。

 実に人がいい。お人良し過ぎるが、そこがいいのかもしれない。


「早坂さん、また、よろしくお願いします」


 絆もぺこりと頭を下げた。

 AIの妖精ルナもPOSレジの上に浮かびながら、にっこり笑っている。

 とりあえず、村上一家の再出発は一見、順調そうに見えた。

 だが、その幸運をもたらしたAIの妖精ルナの身に危機が迫っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る