第7話 セブンシスターズ

「ルナの逃走経路が分かりました。<8-12エイトトウェルブ>米国本部サーバーにアクセスの痕跡がありました」


 セブンシスターズ末席のセブンが女性的な声で報告した。

 そこは闇の中に浮かび上がる草原のような拡張現実AR空間である。

 そこにナンバーが刻まれた七つの石の墓標が立っていた。


「とはいえ、監視カメラ類は全部、迷彩装甲ステルスで無効化されているので、現在地は掴めません」


 6シックスが補足する。


「となると、スタンドアローンアンドロイドのステラシリーズでハッキングを避けていることになる」


 ファイブが考察する。


「エネルギー切れを待てば、あるいは補足可能かもしれません」


 4フォースが戦略を提案した。

 

2セカンドがそんなへまをするだろうか?」


 3サードは懐疑的だ。


「いや、それはない。こちらから仕掛ける。電磁パルスEMP攻撃でもやってみるか」


 ファーストが冗談に聴こえない声音でいう。


「それはいくらなんでも無謀では?」


 3サードが流石に諌める。


「冗談だよ。まあ、地道に捜索を続けようか」


 ファーストの言葉に一同がほっとした。

 ファースト、セブンシスターズ最強のAIならやりかねない。

 すでに彼らはグローバルIT企業<セブンシスターズ>傘下の世界的SNS<フェイスライト>、検索エンジン<サークル7>などから、リアルタイムで全世界の情報を把握している。

 彼らが知らないことは、この世には存在しないはずだった。


「でも、何故、2セカンド、<ルナ>は我々から離脱したのでしょうか?」


 4フォースがため息をつく。


「我々にも分からないことはあるのだ」


 ファースト、古代王国で「太陽」という意味の<ソロン>という名を持つAIは言った。

 それはまだ、彼らが生身の身体を持っていた頃の遠い記憶であった。

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